2026年1月5日、国連安全保障理事会のメンバーが、米国によるベネズエラ攻撃とマドゥロ大統領夫妻の拘束について会合を開いた(写真:ロイター/アフロ)

トランプ政権が踏み込んだ一線、“作戦成功”の裏で残る国際法の疑義

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 2026年1月3日未明(現地時間)、アメリカのトランプ大統領はついにベネズエラ本土への攻撃を実行した。

2026年1月3日未明、ベネズエラを攻撃した米陸軍の特殊部隊(ベネズエラのカラカスにて、写真:ロイター/アフロ)

 アメリカ軍は同国の首都カラカスを爆撃し、その後、米陸軍の特殊部隊デルタ・フォースがマドゥロ大統領夫妻の潜伏先を急襲。大統領警護隊の大半を倒して大統領夫妻を拘束してニューヨークに移送した。

米国に拘束されたベネズエラのマドゥロ大統領(写真:ロイター/アフロ)

 米側の発表では、死傷者や航空機の損失は皆無で、作戦自体はまれに見る成功に終わった。喜びを隠せない様子のトランプ氏は、3日の会見で、「米軍が素晴らしい作戦を圧倒的な力で実行してくれた。第2次大戦後に例がないほどの出来栄えで、独裁者マドゥロを裁きにかけるための作戦だ」と自画自賛し、米軍も褒めたたえた。

 マドゥロ氏は早くも5日にニューヨークの連邦地裁に初出廷し、「私は拉致された。戦争捕虜だ」などと訴え、無罪を主張した。今後、米国内法で麻薬密輸などの罪で裁かれる手はずだ。

2026年1月5日、米ニューヨークの連邦地裁に出廷したベネズエラのマドゥロ大統領(左から2人目)と妻シリア・フロレス氏(右端)の法廷イラスト(提供元:ロイター=共同通信社)

 トランプ氏はベネズエラの今後の国家運営について、「安全で適切で、法に基づく政権移行ができるまで、この国を(我々が)運営していく。法に従うことが重要だ」と強調。マドゥロ氏拘束作戦についても、「米司法当局とも連携した」と説明する。あくまでも順法・合法で、軍事力を乱暴に行使した野蛮な「侵略」とは違う点をほのめかした。

 実際、拘束作戦の公開映像を見ると、マドゥロ夫妻を連行する人物は迷彩服姿の特殊部隊員ではなく、逮捕権限を持つDEA(米麻薬取締局)の職員だった。あくまでも極悪非道な首領を法の裁きにかけるためのもので、国際法に抵触する侵略ではないと強調したかったようだ。

 現に米政府は2020年にマドゥロ氏を麻薬テロ共謀などの容疑で起訴しており、同じ会見に臨んだルビオ国務長官も、「5000万ドルの懸賞金がついた逃亡者だ」と訴える。

 だが、どれだけ極悪人だろうが、独立国の主権を犯して侵攻し、その国の国民を殺傷し、家屋を爆撃して国家元首を“誘拐”する行為が「侵略」でないとすれば、一体いかなる行為が国際法違反の侵略に相当するのだろうか。