中国が突く“悪しき前例”、尖閣で問われる施政と抑止の実効性
ロシア外務省は3日に声明を出し、「武力による侵略行為だ」と非難。中国外交部も同日、「アメリカのこのような覇権行為は国際法に深刻に違反し、ベネズエラの主権を侵害するもの」と指摘した。ウクライナ侵略戦争が現在進行形のロシアに対しては、「自分の行為を棚に上げて、どの口が言っているのか」との国際社会の声も少なくない。
もっとも中ロにとってベネズエラは南米唯一の“盟友”で、多額の軍事・経済援助によってマドゥロ政権を支えてきただけに、今回のトランプ氏による有言実行には驚きを隠せない。
一方で、今後国際法を無視した行為を犯しても、“最大の敵”であるアメリカは文句が言えなくなった──との解釈もできる。そこでむしろ好機と捉えた中ロが「力による現状変更」を連打するのではないかとの懸念も出ている。
一部メディアではすでに、ロシアがウクライナのゼレンスキー大統領を、中国が台湾の頼清徳総統をそれぞれ拘束し、「国家反逆罪などの容疑で裁くことも許容されてしまう」との記事も飛び出している。
実際は双方とも実現は極めて困難だが、中ロはマドゥロ氏拉致を「悪しき前例」として掲げ、自国の勢力圏拡大に精を出すのではないかと見る向きもある。まさに弱肉強食の世界の再来である。
例えば「尖閣諸島」はその最右翼かもしれない。中国は以前から一方的に自国領だと主張し続け、同諸島の領海内に自国の漁船(恐らく海上民兵と呼ばれる武装船)や中国海警局(沿岸警備隊)の巡視船を侵入させ、年々その度合いを強めている。
昨年の高市早苗首相の台湾有事発言で、日中関係はいまだ険悪ムードのままだが、むしろこれに乗じて、尖閣における中国の軍事的プレゼンスを一気に高めようと画策するかもしれない。そこでいよいよ海軍艦船を、尖閣の領海内に“常駐”させる強硬策に出る可能性もある。
ただ中国にとって日米安全保障条約は気がかりだろう。アメリカはこれまで常に「尖閣も日米安全保障条約の適用範囲内」と強調し、トランプ政権も踏襲する。
だが日米安保条約第5条には「日本の施政の下にある領域」と明示され、ここで武力攻撃があった場合に限り、条約は有効で米軍出動の条件が整う。あくまでも日本が尖閣諸島の施政権を保持することが絶対条件で、中国海軍艦船が尖閣を包囲し、日本の海上保安庁の巡視船が近づけない状況が常態化すれば、「施政権」が怪しくなり、日米安保の適用外ともなりかねない。
トランプ氏は中国とのビッグ・ディールを念頭に置き、同盟国よりも自国第一主義がモットーだ。これを考えると、「日本が命を懸けて死守しない小さな無人島のために、何でアメリカが中国と交戦しなければならないのか」と思っても不思議ではない。中国はまさにここを突いてくるはずだ。