ウクライナ停戦を急ぐトランプ、NATO亀裂を狙うプーチン

 ヨーロッパでは、ロシアのプーチン大統領の「次の一手」が気になる。

 今年2月で丸4年を迎えるウクライナ侵略戦争は、いまだ出口が見えず、アメリカが執拗に提示する和平案に、ウクライナのゼレンスキー大統領は応じようとしない。ウクライナにとって屈辱的な「曖昧で口約束の安全の保証」と「ドンバス地方の領土割譲」の2条件を受け入れることは、さすがに難しいだろう。

2025年12月28日、戦争終結の和平案について協議するトランプ米大統領(右手前)とウクライナのゼレンスキー大統領(左手前)/写真:ロイター=共同通信社

 ただ、1日でも早く停戦に持ち込みたいトランプ氏は、もしかしたら、昨年と同様にウクライナに対する軍事支援の全面停止や、スターリンクなど衛星通信の遮断、軍事情報提供のストップなどに踏み切りかねない。

 ウクライナに提供される米製兵器の購入代金は、現在NATO予算で賄われているが、売却を渋ったり、米軍の強大な兵站システム(輸送、保守・点検、訓練、医療など)の利用を拒んだりするなどしてウクライナ側を揺さぶる可能性もある。

 こうして最終的にゼレンスキー氏の首を無理やり縦に振らせ、ロシアに有利な条件で和平協定を締結。ベネズエラの独裁者を倒し、麻薬中毒に陥りつつあった何万人もの命を救った……という功績と併せ、トランプ氏は再びノーベル平和賞受賞の皮算用をするだろう。

 この裏で、「アメリカ主導のベネズエラ復興をロシアが邪魔しないと確約すれば、見返りにアメリカは力ずくでもウクライナに停戦協定を承諾させる」という、トランプ、プーチン両氏の“密約”が交わされたとしても不思議ではない。

トランプ氏の「悪しき前例」を見て、ロシアのプーチン大統領はどう動くか(©Mikhail Metzel/Kremlin Pool/Planet Pix via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

 ただしこれは、NATO加盟の欧州諸国の、アメリカに対する不信感をさらに助長する結果をもたらすはず。最悪の場合、アメリカのNATO脱退、あるいは「NATOの軍事機構部分からの離脱」を決意することもあり得るだろう。NATOには参加するものの、軍事活動には加わらないという方針だ。実際フランスが1966~2009年にこのスタンスを取った。

 これはプーチン氏が望んでいた、宿敵・NATOの瓦解である。

 この場合、NATO内の亀裂をさらに深くするため、ロシアはあえて「スバウキ回廊」「バルト三国」への軍事挑発を行うのではないかとの見立てもある。NATO第5条の集団的自衛権を発動し、反撃を求める欧州側と、そもそも欧州での紛争に関わり合いたくないと考えるトランプ政権との間の、内部対立を煽る作戦である。

ポーランド北東部スバウキ回廊周辺の丘陵(写真:共同通信社)

 具体的には、ロシアの同盟国・ベラルーシと、バルト海に面するロシアの飛び地・カリーニングラードとを隔てるスバウキ回廊(直線距離で約60km。ポーランドとバルト三国のリトアニアとを陸路で結ぶ隘路でもある)やバルト三国を舞台に、戦闘機やドローンによる領空侵犯や国境警備兵の越境行為、事故を装ったミサイルや大砲の越境着弾などを今以上に頻発させるのである。

スバウキ回廊(提供元:共同通信社)