米軍によって就寝中に襲撃・拘束されニューヨークへ移送されたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(左、1月3日、提供:ロイター/アフロ)
プロローグ/2025年のロシア総括
年明け早々、米軍によるベネズエラ地上攻撃・大統領夫妻拘束という世界の耳目を驚かす大事件が発生(後述)。
筆者は即、モサドによるアイヒマン拘束事件(1960年5月にイスラエルの諜報機関モサドが、ホロコースト実行の責任者であるナチス親衛隊のアドルフ・アイヒマンをアルゼンチンで拘束し、イスラエルへ連行した秘密作戦)を想起した次第です。
格言に曰く、「権力は二つの顔を持っている。本来の顔はこの上なく醜く、手に入れるとさらに醜くなる」。
現代の独裁者の顔を見ていると、この格言が正鵠を射ていること、得心がいきます。
世の中には、短い演説で歴史が動き、世界観が変わることがあります。実例をいくつか列挙します。
「人民の、人民による、人民のための政治」(government of the people, by the people, for the people)(1863年11月、A.リンカーンの「ゲティスバーグ演説」)。
わずか2分の短い演説で、南北戦争の意味を「国家の存続」から「民主主義の理念」に昇華させました。
「国があなたのために何をしてくれるのかではなく、あなたが国の為に何ができるのかを問いなさい」(1961年1月、米J.F.ケネディ大統領就任演説)。
国民の意識を「受け身」から「主体」に転換しました。
“Ich bin ein Berliner!” (「私は一人のベルリン市民だ!」。1963年6月、「ベルリンの壁」を前にして、西ベルリン市民に米国の揺るぎない連帯を訴えた米ケネディ大統領演説)。
ケネディ大統領の隣には、当時のW.ブラント・西ベルリン市長(後の西独4代目首相)が立っていました。
「軍事力ではなく対話を」(1988年12月、ソ連邦M.ゴルバチョフ書記長国連演説)。
続く1989年12月には嵐のマルタ沖にて米ソ首脳艦艇会談(ブッシュ・ゴルバチョフ会談)が開催され、米ソ冷戦時代が終結。
しかしゴルバチョフ書記長の冷戦終結への意思表示は、結果としてソ連邦崩壊の引金になりました。
翻って、現在の独裁者の共通点は演説が長いだけで、聴衆の琴線に触れる言葉は出てきません。
露V.プーチン大統領は昨年12月19日、恒例の「国民との対話」を開催。4時間半にわたる質疑応答の中で、改めてウクライナ軍のウクライナ東南部4州からの完全撤退を求めました。
要するに、プーチン大統領には領土問題に関してウクライナ側と妥協の余地なく、ウクライナ完全制圧を目指しています。
ロシア軍は2022年2月24日にウクライナに全面侵攻開始。プーチンのウクライナ戦争は、まもなく第2次世界大戦の独ソ戦(1941年6月~45年5月)を超える超長期戦になります。
ロシアには2つの祖国防衛戦争があります。ナポレオンは大陸封鎖令に従わない帝政ロシアに侵攻して、1812年にモスクワを占領。ロシアにとりこれは祖国防衛戦争でした。
もう一つの祖国防衛戦争は1941年6月22日のナチスによる対ソ開戦です。この2つの戦争は文字通りロシアにとり祖国防衛戦争でした。
しかし、ウクライナ戦争はロシアにとり祖国防衛戦争ではありません。ヒトラーの対ソ侵略戦争同様、プーチンのウクライナ侵略戦争であり、戦争の本質が正反対です。
ソ連邦崩壊の底流は油価低迷でした。油価(ウラル原油)が下落しており、油価低迷によりロシアの鉱区井戸元原油生産は既に原価割れとなりました(後述)。
油価低迷が続けばロシア経済は弱体化・破綻して、ロシアは継戦能力を喪失。その結果、ロシアは今年2026年、停戦・終戦を余儀なくされるものと予測します。
この意味でも、昨年11月後半からの油価(ウラル原油)急落・低迷傾向が2026年も続くかどうか、筆者は大いに注目している次第です。