エピローグ/2026年のロシア展望とウクライナ戦争の帰趨

 最初に本稿の結論を書きます。ウクライナ戦争は今年停戦して、終戦を迎えると予測します。

 露プーチン大統領はウクライナ戦争において、何一つ期首目標を達成していません。短期決戦のはずが長期消耗戦となり、欧米による対露経済制裁は効果大にて、ロシア経済は確実に弱体化しています。

 ロシアはウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟阻止を錦の御旗に軍事侵攻しましたが、長い国境線を有する隣国フィンランドがNATOに加盟。北欧の軍事大国スウェーデンも加盟しました。

 ウクライナ戦争はプーチン大統領にとり誤算の連続となりました。

 この原稿を書いている1月4日、ウクライナ戦争は既に3年11か月目に入っており、「太平洋戦争」(3年9か月)を超え、まもなく独ソ戦(「祖国防衛戦争」/1941年6月22日~45年5月9日)より長期戦になります。

 ロシア軍もウクライナ軍も将兵は疲弊しており、兵員不足が表面化。ロシア国民の厭戦気分も徐々に醸成されてきましたが、ウクライナ国民はあくまでも「ウクライナの尊厳」を選択しました。

 右肩上がりだった露ウラル原油の油価は、ウクライナ侵攻後に下落開始。欧米主要メジャーはロシアから撤退。ロシア経済は戦争経済に突入、国家財政は大幅赤字となりました。

 ロシアでは重要経済指標が順次非公開となり、原油生産量は2023年3月度から発表禁止になりました。

 露連邦統計庁は毎月下旬に前月までの鉱工業生産指数を公表していたのですが、2024年からアクセス不能となりました。戦時経済移行に伴い実態経済が悪化したので、内容公開を禁止したものと推測されます。

 ロシア第3位と4位の石油会社は以前から経済制裁対象企業に入っていましたが、今般、ロシア最大の石油会社「ロスネフチ」と第2位の「ルークオイル」も経済制裁対象企業に加わりました。

 制裁対象原油を輸送する「影の船団」に対する監視も厳しくなり、ロシア産原油の輸出先も先細り傾向です。現行の油価下落・低迷が続けば、2026年には倒産するロシア石油企業もでてくると予測します。

 世界最大のガス会社「ガスプロム」の経営も悪化しています。気体としての天然ガス輸出先は激減、残る大口輸出先は中国しか存在せず、中国は漁夫の利を得ています。

 習近平国家主席にとり内心笑いが止まらないことでしょう。口先介入だけの「熟柿戦略」が中国に莫大な利益を保証しているのですから。

 中国の利益=ロシアの国益毀損であり、これは莫大な国富がロシアから中国に移転している構図です。

 プーチン最大の誤算は戦争の長期化・泥沼化と言えましょう。

 開戦劈頭でウクライナの首都キーウを制圧し、親露派ヤヌコーヴィッチ傀儡政権を樹立して、ベラルーシ同様ウクライナを属国化することがプーチンの期首構想でした。

 しかし、見事に失敗しました。

 ロシア軍によるウクライナ侵攻に対する、欧米による対露経済制裁措置は効果大。欧米メジャーや石油サービス企業のロシアからの撤退はロシア石油・ガス産業を直撃し、ロシア経済の弱体化を招きました。

「ロシアは石油・ガス収入が潤沢にあり、対露経済制裁措置は効果ない」等と話している評論家もいますが、ロシア経済やビジネス実態を知らない人の机上の空論にすぎないと言わざるを得ません。

 2023年6月のウクライナ軍による対露反攻作戦は失敗しました。

 一方、プーチン大統領はベラウーソフ国防相・ゲラーシモフ参謀総長に対し、2025年11月中旬までにロシア軍によるウクライナ東部2州の完全制圧を厳命。ロシア軍は大攻勢をかけましたが、依然として東部2州の激戦地では戦闘が続いています。

 ウクライナ軍は防衛しながら戦術的撤退を余儀なくされていますが、双方の人的被害は大きく、戦線は膠着状態に陥っています。

 現状ウクライナ軍不利と報じられていますが、ロシア軍の勝利でもなく、戦争は長期化・泥沼化・消耗戦の様相を呈しています。一部戦線では、ウクライナ軍による反撃成功も報じられています。

 すなわち、ロシア軍の2025年秋季大攻勢も実質失敗したと言えましょう。

 ウクライナ戦争は長期化すればするほどロシア軍有利と解説している人もいますが、継戦能力は戦費と兵站補給にかかっています。また国民の戦意は、数値では評価できない戦力です。

 筆者はウクライナ開戦後、一貫してプーチン後継はプーチンと主張してきました。露プーチン大統領にとり、大統領職に居座ること以外の選択肢は存在しないのです

 当たるも八卦、当たらぬも八卦。最後に今年2026年を大胆に占います。

 油価下落・低迷と欧州による対ウクライナ軍事支援が続く限り、ロシアにとってのウクライナソ連にとってのアフガニスタンになる可能性ありと筆者は予測しております。

「戦争経済」により経済が持続的繁栄を享受することは不可能です。油価下落による経済弱体化と戦費不足が表面化してきました。

 2024年5月に誕生したロシア新内閣は戦時内閣です。プーチン大統領が経済専門家を国防相に任命したことは、ウクライナ戦費捻出の必要性と重要性を物語っています。

 ロシア経済は今、偉大なる「ポチョムキン村」(見せかけの繁栄)への道を歩んでいます。

 現行の低迷した油価水準が2026年も続けば、ロシアの戦費供給源は枯渇して、ロシアは停戦・終戦を余儀なくされることになると筆者は予測しております。