大谷翔平選手の二刀流復帰試合(6月22日・対ワシントン・ナショナルズ戦、写真:ロイター/アフロ)

イノベーションを生み出すために必要な能力

目次

 イノベーションの範囲は広い。

 一般的には企業の製品開発やそれにつながる科学技術分野での技術革新がイメージされる。しかし、イノベーションはそれだけではない。

 企業経営のマネジメント、音楽や絵画、スポーツ、料理、ファッションなど様々な分野でイノベーションは生み出されている。

 大谷翔平選手の二刀流、日本の懐石料理の手法を取り入れてコース料理として多種多様な少量の料理をおまかせで提供するフランス料理、若者たちが夢中になっているゲームやSNSのコンテンツなどもイノベーションに含めることができると思う。

 つまり、企業業績を改善させる製品開発やそのための科学技術だけがイノベーションの領域ではない。

 そうした様々なイノベーションを生み出すために必要なのは何か。

 ほかの人たちが思いつかないことを構想する斬新な発想、やりたいと思ってもどうしたらできるのか分からなかったことを実現する革新的技術開発を追い求める探求心、それらを実現に結びつける並々ならぬ努力の積み重ねがイノベーションを生み出す。

 人はそれぞれ自分自身の個性に応じて得意分野が異なるが、何か自分の得意な分野を持っている。

 自分には得意なことがないと感じている人がいるとすれば、それはまだ自分の能力に気が付いていないだけである。

 自分に得意なものを見つけることが家庭および学校を中心とする教育の最も重要な目的の一つである。

 学校を卒業して社会人になってから自分の得意分野に気づくこともよくある。その場合でも学生時代に身に着けた能力が土台になっているケースが多い。

 自分の得意分野に気づいた後、それをどこまで伸ばすことができるかが重要である。

 多くの場合、得意分野は複数存在する。

 大谷翔平選手の場合は、得意分野がピッチャーとバッターの両方であり、それらを同時に前人未踏の世界最高レベルにまで引き上げた。

 そこまで卓越したレベルではなくても、経営者でありながら絵画やピアノが得意、俳優でありながら料理が得意、デジタル分野の専門家でありながら釣りの名人といった多才な人々は枚挙にいとまがない。

 自分の得意分野の能力に気づいた後にそれを伸ばす方法は、分野が違っていても共通点がある。このため、上記のように複数の得意分野を持つ人が少なくない。

 そうした自分の得意分野の能力を磨くうちに、斬新な発想や技術革新に気づくことがイノベーションの種になる。