高市外交は滑り出し好調だったが・・・(写真は10月31日韓国での日中首脳会談時、写真:新華社/アフロ)
1.順調な滑り出しが高く評価された高市外交
10月19日から11月1日まで、北京、上海、広州を訪問した。
ちょうどこの出張期間中の10月28日に日米首脳会談、30日に米中首脳会談、31日に日中首脳会談と3つの重要会談が行われた。
高市早苗首相は首相就任早々だったにもかかわらず、いずれの会談も比較的平穏にこなし、高市外交は順調な滑り出しを示していた。
中国の関係では靖国神社への参拝を控える方針を示すなど、日中関係への配慮も見られていた。
高市首相は対中強硬姿勢の政治家として知られていることから、中国側もそれを警戒して、高市首相就任に対する祝電を習近平主席ではなく、李強総理が送った。
このため、韓国・慶州でのAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議期間中は日中首脳会談が実現しないのではないかとの予想もあったが、無事に実現した。
ここまでは日本企業の中国現地駐在責任者が高市首相の予想以上に冷静な外交手腕を高く評価する声をしばしば耳にした。
日本企業関係者の中には中国駐在経験が10年、20年というベテランが多い。彼らは尖閣問題をはじめとする日中関係の悪化により、何度も中国事業に対する逆風を経験してきた。
中国市場での売り上げが伸び悩み、目先の業績が悪化するのみならず、日本国内で中国ビジネスに対するネガティブな見方が広がることによる中長期的なダメージも大きい。
中国市場開拓の努力の結果つかんだビジネスチャンスを生かして業績拡大につなげるため、中国現地駐在の幹部から投資拡大提案を行っても本社経営層の承認を得られないという惨めな経験を繰り返し味わってきている。
それだけに今回の高市外交の順調な滑り出しを見て、これを高く評価し、今後の日中関係改善への期待が膨らみつつあった。
同時に、「台湾、歴史問題、領土問題など踏んではいけない虎の尾を注意深く避けてくれることを期待したい」と心配する声もあった。