2.台湾問題でのつまずきとその波紋
難しい問題が生じたのはそうした状況の最中だった。日中首脳会談直後に高市首相が台湾代表との写真をSNSに投稿した。
これについて、中国の内政外交に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の同僚である峯村健司氏は「習氏にすれば、“首脳会談直後にオレのメンツを潰しやがって”とはらわたが煮えくり返っているはずです」(11月7日付週刊ポスト)と述べている。
中国現地駐在の日本企業関係者の多くも峯村氏と同じような見方をしていたはずだ。事態はそれだけで終わらなかった。
11月7日の衆議院予算委員会で立憲民主党の岡田克也氏の質問に答える形で「存立危機事態」の解釈について高市首相が踏み込んだ説明を行ったことなどが中国側からの厳しい批判の標的となった。
その波紋は、外交のみならず、中国人の訪日旅行客に対する渡航自粛要請や日本への留学を考える中国人学生への慎重な検討の呼びかけにまで広がっている。
これが日本人の中国滞在短期ビザ発給規制の再強化や日本の水産物の中国向け輸出規制の再強化につながることを懸念する声も多い。
高市外交の順調な滑り出しを喜んでいた多くの日本企業関係者、中でも現地駐在経験が長く、今も中国ビジネス最前線に立っている人たちは、今後の中国ビジネスへの影響を思い浮かべ、暗澹たる気持ちになっていると推察される。