イノベーションへの道のりを支える人格形成教育

 大谷翔平選手のレベルにまで達しなくても、イノベーションと言えることを実現するにはたゆまぬ探求心に支えられた努力を長期にわたって継続することが必要である。

 単純に一つのことがどうしようもなく面白く感じて、長期にわたって人一倍の努力を継続できる人もいる。

 しかし、多くの場合、そうした並々ならぬ努力を長期的に継続するインセンティブになるのは、周りの人の役に立つ、周りの人から応援される、あるいは周りの人に喜んでもらえるといった周囲との関わり合いが重要な要素となる。

 野球やサッカーの場合でも、一流選手のコメントを聞くと、自分がいい結果を出すことを最優先目標としている選手はほとんどいない。

 誰もが共に戦うチームの仲間のため、熱心に応援してくれるファンのために頑張ることが一番大切だとコメントする。

 つまり、自分のためでなく、周囲の人たちのために努力をする人が立派な選手になる。

 これはノーベル賞を受賞した科学者、立派な業績を実現した経営者、多くの人を魅了する料理人やアーティストなどにも共通している特徴である。

 それは必然的結果である。

 いつも周りの人たちのために役に立ちたい、周りの人たちを幸せにしてあげたいと願っている人はみんなから感謝され、その人が何かをやろうとすれば応援してもらえる。周囲の人たちの応援は人一倍の努力の重要な支えとなる。

 どんな得意分野でイノベーションに向かって努力をしていても、長期的な努力の過程で必ず挫折を味わう。

 その時に挫折を乗り越えて努力を継続できるかどうかが、最終的に優れた結果を達成するために非常に重要なポイントである。

 挫折を乗り越えるために必要なことは何か?それは周囲の人々の応援である。

 マラソン選手が35キロを過ぎて一番苦しい最後の数キロで、沿道の人たちの応援のおかげで最後の力を振り絞って頑張ることができたという声はすべてのマラソン大会に共通しているコメントである。

 イノベーションに向かう人生においても同じだ。

 イノベーションとして認められるまでの間に非常に苦しい挫折を何度も経験することが多い。それを繰り返し克服できる人たちがイノベーションを実現する。

 そのように考えれば、イノベーションを実現するうえで重要な要素が明らかに見えてくる。

 第1に、自分の得意分野をみつける教育機会を得ること。

 第2に、得意分野の能力を伸ばし続けるためには、自分の私利私欲のためではなく、みんなのためになることを目指すことが大切であることを認識すること。

 第3に、みんなのためにたゆまぬ努力を継続する人間力を身に着けること。すなわち人格形成である。

 したがって、イノベーションを促進する教育は高校、大学からでは遅すぎる。自分の得意分野の能力に気づかせ、人格形成を促進するには、幼稚園、小中学校の時代の教育こそが重要である。

 自分のための目先の利益ばかり追求するのではなく、みんなのためになることを優先する心を育むことが重要である。

 イノベーション促進のために目指すべきはモラル教育を通じた人格形成である。