昨年10月29日、韓国・慶州で会談したトランプ米大統領(左)と李在明大統領(写真:共同通信社)
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 2026年1月26日(現地時間)、トランプ大統領による対韓国関税の再引き上げ警告は、李在明(イ・ジェミョン)韓国政権の対米認識が現実とどれほど乖離しているかを端的に示す出来事だ。さらに、米国と中国の間で「戦略的曖昧性」を強調してきた李在明政権の実用外交が、今後深刻なブーメランを迎えかねないことを暗示する事件でもある。

トランプの関税攻勢、何とか凌いだと思われたが…

 昨年7月30日、韓国の李在明大統領は米ワシントンでドナルド・トランプ大統領と初の首脳会談を行った直後、公式合意文や共同記者会見の代わりに、自身のフェイスブックを通じて「アメリカとの関税交渉が妥結した」と宣言した。なお、「競争国より低いか、同じ水準を確保した」という、日本を意識した書き込みを掲載し、成果を誇示した。

 同じ時刻、ソウルでも金容範(キム・ヨンボム)大統領府政策室長が緊急ブリーフィングを開き、「自動車関税などは15%に引き下げられた」と発表した。「両首脳の合意文はなぜ出なかったか」を質問する記者に、大統領府報道官は「合意文が必要ないほどうまくいった会談だった」という“希代の詭弁”を弄した。

 ところがその後、韓国が約束した3500億ドルの対米投資金をめぐり、アメリカとの意見の隔たりが浮き彫りになり、米韓関税交渉は破局に向かって突き進んだ。

 7月の関税妥結の際、韓国大統領府は、「対米投資3500億ドルの大部分が保証と貸し出しなどの形式で、現金投資は5%に過ぎない」と説明した。一方、米政府は、韓国の投資金がアメリカ国内の造船所の現代化、半導体工場の増設、バッテリー施設の拡充などに投入される「直接投資金」であることを明確にし、トランプ大統領も「前払い(Upfront)」だと主張するなど、韓国政府を強く圧迫した。

 すると、李在明大統領は米『TIME』誌とのインタビューで、「米国の要求をすべて聞き入れれば(私は)弾劾されるだろう」と述べ、強力な背水の陣を敷いたのだった。韓国政府も外国為替市場の安定を理由に「無制限の米韓通貨スワップ」を現金投資の条件として掲げて執拗に食い下がった。