aespa(エスパ)のニンニン(写真:アフロ)
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(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 K-POPアイドルグループaespa(以下、エスパ)のNHK紅白歌合戦出場が「不適切」だとの批判が高まっている。

 エスパといえば、2カ月間にわたる日本ツアーを終えたばかりだ。ほとんどの会場が1万5000人規模で、チケットは全席指定で1万4800円。若者にとっては決してお手頃ではないものの完売した。

 今年の紅白出場者は、そのツアーのさなかの11月14日に発表された。ところが2日後の16日にはエスパの「紅白出場停止を求めます」というオンライン署名が始まった。掲載された「署名活動の趣旨」には、「彼らが日本の文化と歴史に対する理解を深め、再検討する時間を与えるべきです」と、強い言葉で結ばれている。

「きのこ雲」かわいい?中国人メンバーの投稿が物議

 その原因は、中国人メンバーのニンニンが購入したとされる“きのこ雲ランプ”だ。署名サイトでは、「自分の部屋に飾っただけでなく、『可愛いライト買ったよーどう?」と投稿までしました。この行為は、歴史的な悲劇を軽々しく扱うものであります」と主張されている。

 NHKは公共放送であるうえに、局を代表する紅白歌合戦の出場者に原爆犠牲者の命を軽く扱う言動があったというのは由々しき問題だ。この署名は24時間で4万5000人を突破し、本記事の執筆時点(12月8日)には12万6500人を超えている。

 この騒動は12月2日、参議院の総務委員会でも取り上げられた。日本維新の会の石井苗子議員がNHKの山名啓雄専務理事に対し説明を求めたところ、「当該メンバーに原爆被害を軽視し揶揄(やゆ)するような意図がなかったことを所属事務所に確認している」と返答している。

K-POPアイドルグループのaespa(エスパ)(写真:アフロ)

 エスパの騒動は署名開始当初から韓国でも公共放送のKBSをはじめ、各メディアが報じている。日本はK-POPの最大市場であるため、紅白に何組のK-POPアイドルが出場するかは、毎年注目を集めるからだ。

 特に今月に入ってからは、日本でなぜそのような事態になっているのか、その理由を主にネットメディアが報じている。とはいえ、署名活動の趣意文と重なるような、原爆被害者への哀悼の念が確認できる報道は、調べた限り見当たらなかった。

 韓国で軒並み報じられているのは、高市首相の台湾発言を契機とする日中関係の悪化にエスパが巻き込まれたという分析だ。