「きのこ雲」批判は日中対立のとばっちり?
タブロイド紙である日曜新聞のネット版では日中関係の悪化により「K-POPは綱渡り状態」だといった趣旨の見出しを打った記事を掲載。中国人や日本人メンバーがいるK-POPグループは「両国の顔色をうかがわなければならない状況」だと報じている。
この記事の中で、エスパの騒動は、11月28日に広東省の広州で予定されていた、日本人メンバーのみで構成されるK-POPの男性アイドルグループJO1のファンミーティングが中止になったことと同じく、日中関係悪化のあおりを受けたと見立てている。
エスパのウィンター(写真:アフロ)
つまり、エスパの紅白出場反対運動は日中関係悪化に影響を受けたもので、政治的だという分析だ。そうなると、エスパはそのとばっちりを喰ったK-POPアイドルグループだとして、韓国社会では同情の対象になる。
現地のソーシャルニュースメディアのなかには、「NHKへのエスパ出演強行同意?」と題するアンケート調査も行われており、6日の時点で賛成63.2%、反対が36.8%だった。それにしても「強行」とは、まるでバリケードを突破しようというような、ただ事ならない印象を受ける。
きのこ雲といえば、7年前のBTSの一件がある。メンバーの一人ジミンが原爆投下時に発生したきのこ雲の写真をプリントしたTシャツを着た写真がSNSで拡散され、日本のテレビ番組で予定されていた出演が見送られている。しかもその左側には「愛国心、私たちの歴史、解放、韓国」と英語で何行にもわたり書かれている。
産経新聞論説委員の黒田勝弘氏はジミンのきのこ雲Tシャツをめぐってこう述べている。「話題になった韓国映画『軍艦島』でも、ラストは長崎への原爆シーンです。韓国人が軍艦島から脱出し、船に乗って島を離れる時に、長崎の市街地では原爆のキノコ雲が立ち上がっている……。韓国を支配した(日本への)罰の象徴として使われている。メディアで原爆がそのように扱われている韓国において、日本人のように悲惨さを想起させることはありえない」
そういえば、トランプ大統領でさえも今年6月、原爆投下を正当化するかのような発言をしている。歴史問題だけでなく、台湾有事をめぐり日本と対立を深めている中国出身のニンニンにとってはなおのこと、日本人と同じように原爆の悲惨さを想像することは難しいということかもしれない。
エスパのジゼル(写真:アフロ)
とはいえ、ニンニンはK-POPアイドルであるのだから、韓国社会がこの「きのこ雲」騒動をどう見ているかが今後の展開に影響する。というのも、ジミンのときは所属事務所が謝罪して、その後、騒ぎは速やかに鎮静化した。だが、今回はまだ事務所のコメントは出されていない。
それどころか、今回の騒動がK-POP界に新たなチャンスになるという見方も出ている。「日中関係悪化でとばっちりを喰っているが、中国側にある程度寄り添えば克服できる」、といった見立てが広がりつつあるのだ。