「きのこ雲」きっかけに日本より中国?

 その一つが、11月末に香港で行われたK-POP授賞式でのことだ。日曜新聞による前出の報道によれば、直前に香港で高層住宅火災があり、その追悼ムードに包まれ一時は中止も検討されたが、韓国の主催者側からの巨額な寄付のほか、レッドカーペットを中止したり、黙祷したり、終始哀悼の念を表す雰囲気を打ち出した。その結果、香港の映画俳優チョウ・ユンファが会場に姿を見せてくれたというのだ。

エスパのカリナ(写真:アフロ)

 日曜新聞のこの報道は「中国と日本の文化交流の断絶が可視化している状況において、K-POP市場が適切な対応をすれば、むしろ、限韓令を飛び越えて中国市場を開拓するチャンスに再び結びつくかもしれない」と結ぶ。

「限韓令」とは、朴槿恵政権下の2016年にTHAADミサイル配備で中韓関係が悪化して以降、中国政府がとってきた報復措置とされ、韓流文化への規制を中心とするものである。かれこれ10年近くに及ぶこの措置を、もういい加減に解除してほしいという思惑があるのだ。

 そうした気持ちもわからなくはないが、今回のきのこ雲騒動を契機に日本より中国に寄り添おうといった論調はいかがなものか。日本の国会でも議論されたのだから、多少は政治的な印象を持たれてしまうのはやむを得ないところもあるが、公表されている趣意文が無視されたまま報じられている現状は、理解に苦しむ。何よりもまず、ジミンのときの謝罪のように、所属事務所や本人から謝罪が必要だろう。

 だが、韓国のメディアや世論には、原爆の犠牲者に対する哀悼の念を表す気持ちがあるように思えない。日中対立がエスカレートする中、日韓関係までおかしな方向に進まなければ良いのだが…。