トランプ仲介に密かに望みを託しているのかもしれない(写真は4月29日、ロシアを訪問したベラルーシのA.ルカシェンコ大統領と会談した時、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

プロローグ:モスクワに運ばれ、見世物にされるのだけは御免だ

 80年前の4月29日、赤軍迫るベルリン総統官邸地下室にて、A.ヒトラーは愛人E.ブラウンとささやかな結婚式を挙げ、翌30日ピストル自殺。新婦ブラウンも服毒して殉死。

 彼の遺言は「モスクワに運ばれ、見世物にされるのだけは御免だ」。

 遺体は総統官邸の庭で火葬されましたが、ガソリンの量が少なく完全焼却できず、その間に赤軍が官邸に突入。遺骸はモスクワに運ばれた由。

 50年前の4月30日、サイゴン陥落。南ベトナム政権は崩壊して、ベトナム戦争終結。

 圧倒的物量を誇る米軍は敗北して、ベトナムから撤退。北朝鮮軍はベトナム戦争に参戦して大活躍。

 ウクライナ戦争にも参戦して、歩兵の本領を発揮。露プーチン大統領から感謝状を贈られました。

 そのV.プーチン大統領は4月28日、唐突に5月8日午前零時から11日午前零時(モスクワ時間)まで72時間の一方的停戦を発表。

 停戦合意ではなく、一方的宣言です。

 モスクワ赤の広場では、ロシアのプーチン大統領・中国の習近平国家主席・北朝鮮金正恩総書記の3独裁者が並び、後顧の憂いなく対独戦勝80周年記念軍事パレードを盛大に挙行したいという魂胆がミエミエです。

(ただし、金正恩総書記が参加するかどうかは未定)

 仮にウクライナ軍が戦闘継続すれば、「ウクライナは停戦の意思なし」と喧伝することでしょう。

 一方、ウクライナのV.ゼレンスキー大統領にとってはその手は桑名の焼き蛤

 3日間の停戦ではなく、停戦自体を呼びかけ、ロシアは停戦の意思なしと世界にアピールすることでしょう。

 カナダ下院総選挙では、カナダのトランプとも呼ばれていた野党保守党のピエール・ポワリエーヴル党首が落選して、与党自由党が勝利。

 世界中から叩かれている米D.トランプ大統領ですが、ここでは良い仕事をしたようです。

 昔々、受験勉強の際に読んだG.オーウェルの「Animal Farm」はソビエト連邦を理想郷と考える勢力に対する警告の書でしたが、今ではホワイトハウスが第2の「Animal Farm」に成りならんとしています。

 唯一の違いは、農場主が豚から虎に変わっただけと言えましょうか。

 米国とウクライナは4月30日、ウクライナの天然資源へのアクセスに関する協定に署名したと報じられています。

 ウクライナにとり、米国の関心を維持すべくやむにやまれぬ選択肢だったと思料しますが、新規天然資源の探鉱・開発が成功するかしないかは別問題です。

 当方は擬餌と推測しています。

 なぜなら、ウクライナにレアアースがあるかどうか、本当は誰も分からないからです。

 さて、今年ももう5月になり、ロシア軍が2022年2月24日にウクライナに全面侵攻開始してからプーチンのウクライナ侵略戦争は既に3年3か月目に入っています。

 短期決戦・勝利の筈が長期戦となり、ウクライナ戦争はプーチン大統領にとり誤算の連続となりました。

 プーチン大統領は、開戦後2~3日で首都キエフ(キーウ)を占領してウクライナにヤヌコービッチ傀儡政権(V.ヤヌコービッチ氏は親露の元大統領)を樹立予定でした。

 しかし3年経ってもウクライナ戦争終結の目途立たず、戦闘は激化するばかり。

 露ウラル原油は現在バレル$50台で推移しています。

 今年の国家予算案想定油価(ウラル原油)は$69.7ゆえ、この油価水準が続けば戦費は早晩枯渇して、プーチン失脚の道筋が透けて見えてくることでしょう。

 プーチン大統領は内心、キエフに運ばれ、見世物にされるのだけは御免だと思っているのかもしれません。