プロローグ/ロシア新内閣を占う
本稿を書いている5月4日は、プーチンのウクライナ侵略戦争開始後801日目となり、ウクライナ戦争は2年3カ月目に入りました。
ちょうど2年前の2月24日、ロシア(露)軍はウクライナに全面侵攻開始。2月24日のロシア軍軍事侵攻の報に接し、筆者は即、102年前の2月24日を想起した次第です。
この日に何が起こったのかと申せば、ミュンヘンのビアホール「Hofbräuhaus」にてA.ヒトラーがナチス党(国家社会主義ドイツ労働者党)を創設(実際には改名)、25か条綱領を発表しました。
ですから筆者には、V.プーチン大統領はヒトラーの生まれ変わりのように思えました。
プーチン大統領(現71歳)はウクライナ侵攻電撃作戦を発動。侵攻開始後2~3日で首都キーウ(キエフ)制圧可能との前提でウクライナに侵攻したので、戦争の長期化・泥沼化は大きな誤算となりました。
継戦能力は戦費と兵站補給いかんです。
筆者は開戦当初から、「ロシア軍の継戦能力は油価次第、ウクライナ軍の継戦能力は欧米の支援次第」と主張してきました。
ゆえに、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃により油価は上昇。プーチン大統領にとり最大の誕生日(10月7日)プレゼントになりました。
今年に入ると欧米による対ウクライナ軍事支援先細りと油価(露ウラル原油)上昇により、ウクライナ軍不利・ロシア軍有利と報じられるようになりました。
まさにそのような折、米下院は4月20日、対ウクライナ610億ドル(約9.4兆円)と対イスラエル260億ドル(約4兆円)軍事支援法案を可決。
米上院は4月23日に承認、J.バイデン大統領は24日に署名して、法案は発効。米軍は直ちに武器弾薬の輸送準備開始。
今回の米軍事支援により、ウクライナ軍はロシア軍の反攻に対抗できる可能性が高まりました。
ウクライナ軍の祖国防衛が成功すれば、言葉の真の意味において戦争は膠着状態・長期化の様相を呈することになり、戦時経済となった露経済は弱体化必至です。
GDP(国内総生産)プラス成長をもって露経済は回復していると解説している評論家もいますが、これは見当違いです。
国家予算で武器弾薬を製造してGDPが一時的にプラス転換しても、実体経済は成長しません。
ロシアでは5月7日に第5期目のプーチン新大統領が誕生して、新内閣が組閣されます。
5月4日付け露国営タス通信によれば、プーチン新大統領は誕生直後に新首相候補をロシア下院に提出、下院は5月10日に予定されている下院総会で承認する予定です。
さらに、閣僚全員は5月13日開催予定の下院総会で承認する予定とのことにて、5月7日の新大統領就任式から1週間以内に新内閣発足予定となりました(後述)。
(健康問題さえ許せば)2030年には再度大統領選挙に出馬して、2036年まで大統領職に居座ることも可能であり、そうするでしょう。
すなわち、プーチン王朝は少なくとも2036年(プーチン83歳)まで続くことになり、その後は家族に王座を譲位するでしょう。
新大統領就任2日後は対独戦勝記念日軍事パレードとなり、ロシア軍のウクライナ東部大攻勢の様相が透けて見えてきます。
ロシア軍の大攻勢が失敗すれば、露国内情勢の流動化・液状化も視野に入り、戦後のロシアには「国破れて山河在り」がよく似合う状況が出現することでしょう。
本稿では、プーチン新大統領誕生後の新内閣とプーチン・ロシアの行く末を占ってみたいと思います。