プロローグ/プーチン大統領誤算の連続
この原稿を書いている本日3月16日は、ロシア軍が2022年2月24日にウクライナ全面侵攻開始以来752日目となり、ウクライナ戦争は既に3年目に突入しました。
本日3月16日はロシア(露)大統領選挙投票日3月15~17日の2日目です。従来の大統領選挙日は(事前投票日+投票日1日)でしたが、今年の投票日は(事前投票日+投票日3日間)になりました。
V.プーチン候補当選は既定路線です。しかし、ロシア国民の圧倒的多数の支持を得て当選したという儀式が必要にて、それが3日間の投票日になりました。
昨年の今頃は「プーチン後継候補は誰か?」ということがTVなどでも盛んに議論されてきましたが、筆者は一貫してプーチン後継はプーチンと主張してきました。
プーチン大統領が側近を後継候補に指名するや否や、彼はレームダックになります。筆者が昨年来「プーチンにとりプーチン後継はプーチン以外の選択肢は存在しない」と主張してきたゆえんです。
今から104年前の2月24日、ドイツのA.ヒトラーはミュンヘンのビアホール「ホーフブロイハウス」にてナチス党の旗揚げ式を挙行。
その同じ2月24日、反ナチズムを標榜するロシアのプーチン大統領麾下のロシア軍がウクライナに全面侵攻開始。
これを歴史の皮肉と言わずして、何と言えましょうか。
第5次中東戦争に発展しかねない大規模紛争が2023年10月7日勃発。この日は露プーチン大統領71歳の誕生日。
プーチンにとっては最大・最良の誕生日プレゼントになりました。
ロシアでは2月16日に反体制派のA.ナヴァールヌィ氏(47歳)が獄死、死因は「血栓」と報じられています。
真相は不明ですが、露大統領選挙直前のこのタイミングでの獄死はプーチン大統領にとっても想定外の出来事だったと推測します。
ウクライナ侵攻開始後数日間でウクライナの首都キエフ(現キーウ)を制圧し、親露派傀儡政権を樹立する作戦でしたが、戦争は長期化・泥沼化しており、ロシア経済は戦争経済に突入しました。
ロシアはクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟阻止を錦の御旗に軍事侵攻しました。
しかし、長い国境線を有する隣国フィンランドのNATO加盟に続き、北欧の軍事大国スウェーデンもNATO加盟が実現しました。
戦争長期化に伴い、欧米は対露経済制裁措置を強化。米国は2023年、露北極圏グィダン半島の大型LNGプロジェクト「Arctic LNG 2」を制裁対象に加えたので、露LNG発展構想は破綻必至と予測します。
既に導入された対露経済制裁強化措置以外、G7はさらなる新対露制裁措置強化を検討中の由にて、制裁強化対象は石油・ガスや「影の船団」に対する厳格な監視措置も導入見込みです。
本稿では欧米による対露経済制裁措置強化策がロシア経済にどのような影響を及ぼしているのか分析し、世界の石油(原油と石油製品)・ガスの流れはどのように変わるのか、プーチン・ロシアは今後どうなるのかを予測してみたいと思います。
もちろん、筆者の個人的見解にすぎない点を明記しておきます。
本稿の結論を先に述べます。欧米による対露経済制裁措置は効果大です。この点、石油・ガスに関する日系マスコミ報道は間違いが多いので、実例を列挙します。
ロシア軍のウクライナ侵攻後、世界の石油・ガスの流れは大きく変わりました。プーチン後継はプーチンの結果、ロシアの対中資源植民地化が進み、ロシアは偉大なるポチョムキン村になるでしょう。
(編集部注:ポチョムキン村とは貧しいあるいは不利な状況を覆い隠す目的で政治的に作られた村のこと。ポチョムキンはロシアの軍人でエカテリーナ2世のために作った村がこう呼ばれるきっかけとなった)