第1部 2油種週次油価動静(2021年1月~24年4月)

 最初に、2021年1月から24年4月末までの代表的2油種の週次油価推移を概観します。

 ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)と南部ヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油で、中質・サワー原油です。

 なお、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S-1ソーコル原油/S-2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入していません。

 油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後下落開始。

 2022年4月のOPEC+(OPEC=石油輸出国機構加盟国にロシアやメキシコなど加盟していない国を加えた需給調整を行う枠組み)による原油協調減産合意を受け、油価は上昇開始。

 その後、油価は乱高下を繰り返しながら、今年に入り油価上昇しましたが、4月に入り下落しています。

 露ウラル原油の4月29日~5月3日週次平均油価は$68.93/bbl(前週比▲$2.56/露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB)と下落。

(bbl=バレル、1バレルは約159リットル、FOB=本船渡し)

 北海ブレントとウラル原油の値差はロシア軍のウクライナ侵攻後、一時期最大バレル$40の大幅値差となりましたが、直近では値差$17まで縮小。

 しかし原油性状の品質差による正常値差は$2~3程度ゆえ、依然としてロシア産原油のバナナの叩き売り状態が続いていることになります。

 この超安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。しかしこれはビジネスそのものであり、政治的動機はありません。

 付言すれば、中国が輸入している原油はウラル原油ではなく、長期契約に基づきESPOパイプライン(PL)で輸送されているシベリア産ESPO原油ですが、やはりバナナの叩き売り状態になっています。

 世界の原油需給は均衡しており実需面より油価が上昇する要因は存在せず、唯一の油価上昇要因は地政学的要因のみです。

 中東紛争激化に伴い油価上昇しましたが、紛争沈静化に伴い油価は下落傾向です。

出所:米EIA資料より筆者作成/黒色縦実線:2022年2月24日/横線赤字:露国家予算案想定油価/黒字:油価実績