「たたかう仏像」展示風景。 左から、重要文化財 《十二神将立像》のうち午神像 安貞2年(1228)頃 展示期間:〜3/1 重要文化財 《十二神将立像》のうち亥神像 安貞2年(1228)頃 展示期間:~2/8、3/3~3/22
(ライター、構成作家:川岸 徹)
仏像を「たたかう」という視点から捉え、仏様の知られざる側面に迫る展覧会「たたかう仏像」が静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で開幕。重要文化財《十二神将立像》(浄瑠璃寺旧蔵)をメインに、彫刻、絵画、刀剣に表された武装する仏像を紹介する。
薬師如来と信仰者を守る精鋭部隊
病気を平癒し、身心の健康を守ってくださる仏様「薬師如来」。サンスクリット語では「バーイシャジヤグル」といい、バーイシャジヤは医薬、グルは導師を表すことから、日本でも「医療の指導者」として古くから信仰を集めてきた。
この薬師如来について説かれた代表的な経典が『薬師経』だ。『薬師経』は正式には『薬師瑠璃光如来本願功徳経』といい、中国・唐の時代に若き日の三藏法師玄奘がインドから持ち帰り、翻訳したものだと伝えられている。『薬師経』の教えでは、薬師如来がまだ菩薩であった頃に将来行うことを決意した「衆生救済のための十二の大願」が有名。「諸根具足(生まれつきの障がい、病気を癒やしたい)」、「転女得仏(立場の弱い女性が成仏するように手助けしたい)」といった、世の中を健やかにするための12の手段が述べられている。
思いやり深く何ともありがたい仏様であるが、もし「薬師如来」が悪の手に渡ってしまったら、この世はどうなってしまうのか。そんな想像すらしたくない事態を避けるために集められたのが、12の武将で構成された「十二神将」だ。彼らは甲冑に身を包み、武器を携えて、薬師如来と『薬師経』を信仰する人々を守り続けている。いわば要人を警護するSPのような存在だ。
ちなみに12の神将はそれぞれ7000人の兵を率いている。12×7000=8万4000。薬師如来の信仰者を警護しているのは8万4000兵という巨大な部隊である。