第1部 2油種(北海ブレント・露ウラル)週次油価動静(2021年1月~25年4月)
最初に、2021年1月から25年4月末までの代表的2油種(北海ブレントと露ウラル原油)の週次油価推移を概観します。
この2油種は品質が異なり、北海ブレントは軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)、ロシアの代表的油種ウラル原油は中質・サワー原油(同1%以上)。
油価建値は、北海ブレントはスポット、ウラル原油は露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB(Free On Board=本船渡し)です。
原油需給は均衡しており、地政学的要因以外に油価上昇材料は存在せず、各国の研究機関による短期油価予測はすべて下落傾向を示しています。
米国は2022年5月度よりロシア産石油(原油と石油製品)の輸入を停止。
一方、日本が2022年5月に原則禁止を表明するまで輸入していた露産原油3油種(S-1ソーコル原油/S-2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入していません。
油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後、下落開始。
バルト海から出荷されるウラル原油の主要輸出先は欧州(オランダ)でしたが、ウクライナ侵攻後に欧州向けは激減。
輸出先を失ったウラル原油は暴落し、北海ブレントとの値差は最大バレル$40となりました。最近は値差$15~16の水準で推移しています。
しかし、品質差による正常値差は$2~3ゆえ、依然としてロシア産原油の安売り状態が続いていることになります。
これこそ対露経済制裁措置の効果にて、ロシアの国益を毀損しています。
4月21~25日のウラル原油週次平均油価はバレル$53.17(前週比+$1.01)と反発しましたが、今年の露国家予算案想定油価$69.7を大幅に下回っているので、さらなる財政赤字幅拡大不可避となりました。
この超安値ウラル原油を輸入し、自社で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、「濡れ手に粟」の状態がインドです。
しかしこれはビジネスそのものであり、政治的動機はありません。
一方、中国が輸入している原油はウラル原油ではなく、ESPOパイプラインで供給されているESPO原油です。
長期契約に基づき、一部のESPO原油は極東コズミノ出荷基地から海上輸送されています。
