プーチン王朝は困窮している(写真はクレムリン、Анна ИларионоваによるPixabayからの画像)

プロローグ/ロシア経済は「油上の楼閣」

 ロシア(露)経済は「油上の楼閣」であり、油価依存型経済構造です。

 世界の原油需給は均衡しており、短期・中期的には(地政学的要因以外)油価が上昇する要因は存在しません。ゆえに油価は下落傾向に入っており、今後さらに下落することでしょう。

 では、油価に依存するロシア経済の近未来とウクライナ戦争停戦の行方はどうなるのか、本稿にて予測してみたいと思います。もちろん、筆者の個人的見解にすぎない点を明記しておきます。

 欧米による対露経済制裁措置強化と継続は効果大にて、ロシアの石油・ガス産業を直撃しています。

 ロシアの原油生産量は減少傾向に入りました。かつ、ロシア政府が導入した石油・ガス企業に対する大増税策により、ロシアの石油・ガス企業は今後弱体化していくことが予見されます。

 欧米の対露経済制裁措置強化により、ロシア産原油の油価は上限バレル$60に設定されました。

 ただし、この$60は海上輸送によるFOB油価(出荷港の原油代金)であり、パイプライン(PL)輸送により輸出されているロシア産原油は適用外です。

 欧米が設定したロシア産原油上限油価バレル$60(FOB)は、とてもよく考えられた上限油価です。

 一言で申せば、「ロシアの石油企業を生かさず・殺さず」の上限油価設定になります(後述)。

 既にロシア国家予算案の3分の1が軍事費となり、ロシア経済は戦争経済に移行。今後、国民の実生活にも影響不可避にて、国民は近づきつつある軍靴の足音を肌感覚で体験することになるでしょう。

 本稿では、ウラル原油の油価下落がロシア経済にどのような影響を及ぼしているのか定量的に分析して、これが何を意味するのか、プーチン・ロシアは今後どうなるのか予測してみたいと思います。

 ロシアからウクライナ経由欧州向け天然ガスパイプライン(PL)トランジット輸送契約は昨年末に失効。今年1月1日早朝、ロシアからウクライナ経由欧州向け天然ガス供給は完全に停止しました。

 PLトランジット輸送停止により、(当然のことながら)欧州ガス市場では天然ガス不足問題が深刻化。欧州内部の分断も進み、欧州諸国のウクライナに対する支援にも支障不可避となりました。

 欧州ガス不足により、欧州ガス価格は上昇しています。EU諸国はロシア産LNG輸入停止問題を検討していますが、これは非現実的です。

 文字通り自縄自縛案にて、墓穴を掘って窒息するのは欧州諸国ですから、実現しないでしょう。

 欧米による対露経済制裁措置の結果、ロシアの継戦能力は急速に低下しています。

 V.プーチン大統領は「欧米がウクライナ支援を停止すれば、1~2カ月間でウクライナは戦闘不能になる」と発言しました。プーチン大統領が指摘するまでもなく、これは事実です。

 重要な点は、ウクライナのみではなく、同じことがロシアにも当てはまるということです。

 油価が下がれば露財政はさらに悪化して戦費枯渇、ロシアの継戦能力は限りなくゼロに近づくでしょう。

 油価は既に下落傾向に入っています。

 ロシア財政は悪化しており、これが、露プーチン大統領が停戦・終戦を目指す背景と筆者は考えます。

 上記より、今年中にウクライナ戦争停戦・終戦の姿が透けて見えてくるものと筆者は予測しております。