APEC首脳会議(AELM)後のベトナムのルオン・クオン国家主席、中国の王毅外相、習近平国家主席(左から)(2025年11月1日、写真:ZUMA Press/アフロ)
(川島 博之:ベトナム・ビングループ Martial Research & Management 主席経済顧問、元東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)
高市早苗首相の発言を巡って中国との関係が緊張している。ここでは、国境を接し歴史の中で何度も戦ってきたベトナムが、現在、中国とどのように付き合っているか見てみたい。
ベトナムは約2000年前に中国の植民地になり、約1000年前に独立を果たした。だが独立した後も中国は何度もベトナムに攻めて来た。600年ほど前には短期間であるが再度植民地になったこともある。その時もベトナムは大きな犠牲を払いながら独立を回復した。そんなベトナムには中国との付き合い方のノウハウが蓄積されている。
最初に指摘したいことは、日本の左翼や進歩的と称する人々が信奉する国際関係における理想主義がベトナムには存在しないことだ。国連中心主義外交などもってのほかである。真心を込めて話し合えばどんな問題も解決できるというおとぎ話は、ベトナムに存在しない。判断を一つ間違えれば中国が攻めているという緊迫感のもとに生きている。
ベトナムの中国との付き合い方~5つのポイント
【1】抑制的だが断固たる主張を子々孫々にわたって続ける
ベトナムは西沙諸島、南砂諸島の領有権を巡って中国と対立している。現在の中国との国力の差を考えた時に、その問題を現世代で解決することは難しい。だが決して屈服しない。抑制的な抵抗を自分も子供も、そして孫やひ孫も続ける。