米国のトランプ大統領とヘグセス国防長官(右)は同盟国に防衛費の大幅増額を要求する(写真:UPI/アフロ)
米州を中心とした「西半球」を重視する「ドンロー主義」を唱える米トランプ政権は、同盟国に防衛予算を国内総生産(GDP)比5%まで引き上げるよう求めている。2025年度にGDP比2%の防衛費を2年前倒しで達成した高市政権だが、さらなる引き上げは容易ではない。ほかの同盟国はどう対応するのか。韓国海軍で海軍士官学校の教官などを務めた李相會・笹川平和財団研究員によると、同じく米同盟国である韓国はトランプ政権からの“圧力”を契機に「防衛力の構造的強化」を図っているという。東アジア情勢の緊張感が増すなか、日本はどのような道を選ぶべきなのか。
(李 相會=イ・サンフェ:笹川平和財団研究員、元韓国海軍少佐)
トランプ政権による防衛費増額要求、「GDP比5%」の衝撃
「米国がアトラス*1のように世界秩序を独りで支える時代は終わった」
*1:ギリシャ神話に登場する巨神で、両肩で天空を支えている
2025年12月発表されたトランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)に刻まれたこの一文は、同盟国への最後通牒である。その具体的な要求が「GDP比5%の防衛費支出」だ。
2025年6月5日、ピート・ヘグセス米国防長官は日本・韓国を含む同盟国に対し、GDPの5%を国防費として支出すべきだと表明した。国防総省報道官ショーン・パネルも「欧州とアジアの同盟国のためのグローバル基準はGDP比5%だ」と明言し、これが「ニューノーマル」であることを強調した。
これら宣言・要求の背景には、米国の戦略的重心移動がある。例えば、新NSSはアジアにおいて「第1列島線*2」防衛を核心に据える一方、北朝鮮には一度も言及しなかった。2017年の第1期政権時のNSSが北朝鮮について数回言及したことと比較すれば、その沈黙は雄弁だ。朝鮮半島防衛の優先順位が後退し、対北朝鮮抑止の一次的責任が韓国へ移譲されつつある現実を示している。
*2:日本列島から台湾、フィリピン北部へ連なる島々を結ぶ地理的な防衛ラインの概念
トランプ政権は、米軍への「フリーライド(ただ乗り)」を許さないと同時に、自立を要求しており、それが数値化されたのが「GDP比5%」という数字である。
では、この転換は韓国を含む東アジアにどのような波紋を広げるのか。本稿では韓国の事例を中心に、防衛予算増額の動向、東アジアのパワーバランスへの影響を検証した上で、日本への示唆を検討する。同じ要求を受けた韓国の選択は、日本にとって重要な参照例となろう。