米国への従属を避け、交渉発言力の確保を狙う
これらの投資優先順位からは、トランプ政権の同盟政策に対する韓国の対応方向性を読み取ることができる。
韓国の2026年防衛予算を精査すると、トランプ政権のNSSが明言した「富裕で発展した同盟国が自国地域に対する一次的責任を負うべき」という構想を一定程度受け入れつつも、増額分を「米国依存の深化」ではなく「自主能力の強化」へと振り向け、自立の契機として再認識する意図が透けて見える。
すなわち、脅威対応における同盟負担拡大という米国の戦略には合致させながらも、戦時の作戦統制権転換・技術自立を達成するための投資として予算を設計し、完全に米国の意図に従属させられることは避け、今後の交渉発言力を確保しようとしているのである。
トランプ政権の外圧を防衛産業成長に向けた触媒に
防衛予算、特に防衛力改善費の拡大は、韓国防衛産業に複合的な波及効果をもたらしている。
まず内需拡大が生産基盤を強化している。KF-21(韓国航空宇宙産業=KAIが製造)、K-2戦車(現代ロテム)、K-9自走砲(ハンファ)、天弓ミサイル(LIGNEX1)など、主要事業は国産であり、防衛力改善費20兆ウォンの大部分が国内企業へ発注される構造である。韓国政府は「防産地域連携・生態系基盤構築」関連予算を倍増し、中小の防衛関連企業の育成にも注力している。
この生産能力の底上げは、輸出競争力を生み出している。
韓国の防衛産業輸出は2021年の73億ドルから2022年に173億ドルへ急増し、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の統計で世界シェア2.2%(10位圏)、NATO向けシェア6.5%(米国に次ぐ2位)を記録した。特に、2025年7月のポーランド「K-2戦車2次契約」(65億ドル)は単一輸出として韓国史上最大となり、国内で安定化した生産システムの輸出への進化を示している。
この好循環には構造的論理がある。内需で量産体制を確立し、コストを低減し、実戦配備で信頼性を実証した装備が輸出市場で競争力を持つ。ポーランド、UAE、サウジアラビアなど、輸出先が多様化しており、韓国がグローバル武器輸出国へと転換されたことを示している。
トランプ政権の防衛費増額要求は、短期的には財政負担だが、中長期的には防衛産業の構造的成長を加速させる触媒となる可能性がある。つまり、外部圧力を産業成長の機会として活用したと評価できる。