韓国が巧妙に維持してきた「安保は米国、経済は中国」のハードルは上がる
では、こうした韓国の選択は、東アジア地域全体の安全保障環境にどのような影響を及ぼすのか。
トランプ政権のNSSは、韓国が巧妙に維持してきた「戦略的曖昧性」を許さないという米国の意思を含んでいる。従来、韓国は米国との強固な同盟関係を保ちながらも、中国との経済関係を深化させ、「安保は米国、経済は中国」というバランシングを試みてきた。
それに対し、米中対立の激化とトランプ政権の「負担共有」要求は、この曖昧性の維持コストを急速に引き上げることとなる。韓国が選択した「自主国防能力強化」は、それに対する妥協案とも考えられる。ただし、韓国軍の戦力向上は、結果として韓国が「望まない紛争」に巻き込まれる可能性を高める。
原潜保有は「朝鮮半島防衛」という戦略目標では説明できず
韓国が強化しているいくつかの兵器体系は、原則的には「北朝鮮の核・ミサイル脅威への対抗」を名目としている。しかし、トランプ政権の要求に伴う韓国軍や防衛産業の変化は、韓国-北朝鮮間の軍事バランスだけではなく、東アジア全体にも影響を及ぼす可能性がある。
例えば、玄武(ヒョンム)シリーズ弾道ミサイルの進化は最も象徴的だ。射程1000km級の玄武4型、改良すれば射程5000kmを超える玄武5型は、北朝鮮はもとより、中国の首都圏や沿海部、日本の全地域をも射程に収める。従来の対北朝鮮限定の理由では、この開発経緯を周辺国に納得させることが困難になってきている。
2025年10月のトランプ大統領訪韓の際にも話題となった原子力推進潜水艦(SSN)保有推進も、その使い方の説明は簡単ではない。
韓国は従来型潜水艦でも充分な対北朝鮮作戦能力を持つ。あえてSSNを追求することは、作戦海域が朝鮮半島沿岸から第一列島線を越えて西太平洋へ拡張される可能性を含むので、従来の半島防衛という限定的な戦略目標とは異なる。
李在明大統領がトランプ大統領にSSNの必要性を訴える際に「中国牽制」に言及したことは、その真意はともかく、周辺国が疑うに足る十分な理由となる。