1957年5月~10月、米ネバダ州の核実験場で実施された核実験。後にこの実験で影響を受けた退役軍人に対する疫学的評価が行われ、白血病の症例数が著しく増加していることが分かった(写真:Science Source/アフロ)

トランプ氏が核実験再開を高らかに宣言した背景

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 10月30日、アメリカのトランプ大統領が放った「宣言」が、またしても全世界に波紋を広げている。

 自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、「アメリカはどの国よりも多く核兵器を持つが、これは私の最初の大統領在任中に達成した」と投稿した。

 自らの貢献度をアピールするのはいつものことだが、続けて「(核戦力は)ロシアが2位、中国はだいぶ遅れて3位だが、5年以内には追いつくだろう。他国の核実験計画を受けて、アメリカも同レベルで核実験を始めるよう国防総省に指示した。直ちに開始されるだろう」

 と、核実験の再開を高らかに宣言したのである。ちょうど韓国・釜山で中国の習近平国家主席との首脳会談を数時間後に控えたタイミングだっただけに、関税戦争で火花を散らす中国に対する、挑発的な“ジャブ”と捉える向きは多い。水面下でトランプ・習両氏による激しいやり取りがあったのかもしれない。

大統領専用機内で記者団の質問に答えるトランプ米大統領(2025年10月31日、写真:ゲッティ=共同通信社)

 だが、「ウクライナ戦争の停戦交渉に消極的なロシアのプーチン大統領に対する警告の意味合いが強い」との見方もあり、むしろこちらを注視すべきだろう。

 ちなみに、SNSでは「破壊力が非常に大きいので、実はやりたくはなかったが、やむを得ない」と弁明もしている。トランプ氏は依然としてノーベル平和賞の獲得を諦めておらず、これを念頭に置いた「逃げ口上」とも考えられる。

 ライバル視する共和党の重鎮・オバマ元大統領が「核なき世界」の実現に向けた取り組みで平和賞をモノにしているのに対し、「核兵器増強に積極的」では平和賞にノミネートされることすらおぼつかない。そう自覚しているのかもしれない。