トランプ氏を核実験再開に駆り立てたロシアの原子力推進兵器
1つは原子力推進式巡航ミサイル「ブレベスニク(海ツバメ)」だ。米CNNなどによると、プーチン氏は10月21、22両日に試射を行い成功したと発表。試験は2年ぶりで、約15時間、約1万4000kmを飛び続けて目標に命中したという。
「原子力推進式」は、通常のロケット・モーターに代わり原子炉を載せ、航続距離をほぼ無限に延ばした方式で、地球を数周飛び続けることも可能な“化け物”だ。
通常弾頭も搭載できるが、実戦で使えば原子炉が壊れ目標周辺が高濃度の放射能汚染に見舞われる。そのため、相手側は核攻撃と判断し、核報復に走る危険性が極めて高い。最初から核弾頭を載せて使う「核専用ミサイル」と見る方が的を射ている。
2023年に実戦配備したロシアの新型ICBMサルマト。射程距離は約1万8000km(写真:ロシア国防省サイト)
もう1つは原子力魚雷「ポセイドン(2M39)」である。10月29日付の英ロイターなどによれば、ロシアは28日に実験を行ったという。ポセイドンはブレベスニクと同じく、エンジンが原子炉の原子力推進式で、航続距離は事実上無限だ。完全な自律航行が可能なことから、水中ドローン(AUV)に近い。
ロシアの原子力魚雷「ポセイドン」(写真:Press and Information Office of the Defence Ministry of the Russian Federation/TASS/アフロ)
ポセイドンはブレベスニクよりもはるかに脅威で、2メガトン(広島型原爆約125個分)の破壊力を持つ核弾頭を搭載し、水中速力70ノット(時速約130km)、最大深度約1000mで敵の沿岸の大都市に向かって突進する。あえて沖合で爆発させ、放射能汚染された巨大津波で、沿岸一帯を居住不能にする狙いがあると言われる。
これに匹敵する水中速度・最大深度を発揮する原潜は存在しない。ソナー(音波探知機)での捕捉・迎撃も非常に困難なため、「終末兵器」と呼ばれるほどだ。
ロシア海軍の弾道ミサイル原潜、デルタⅣ型「ツーラ」。潜水艦発射弾道ミサイル(射程8000km強)を16基搭載する(写真:ロシア国防省サイト)