核実験の自主規制「核モラトリアム」を宣言するアメリカだが…
核実験の再開は、通常の爆弾・ミサイルの試験とは大違いだ。最大の問題は「放射能」で、人体・環境への深刻な悪影響が付きまとうため、いくら広大な国土のアメリカでも、「人里離れた実験場ならOK」とはいかない。
冷戦期の1950年、1960年代は、太平洋のビキニ環礁(現・マーシャル諸島共和国領で、ユネスコの世界遺産リストに登録)やアラスカ州、ニューメキシコ州などで盛んに核実験を繰り返したが、現在の核実験場はネバダ州の「ネバダ国家安全保障施設(NNSS)」の1カ所だけだ。
しかもアメリカは核実験の自主規制「核モラトリアム(一時停止)」を宣言し、冷戦終結直後の1992年以降、核爆発を伴う実験を停止している。同様にロシアも1990年から、中国も1996年以降控えている。
世界的な核実験禁止条約としては、約180カ国が署名するCTBT(包括的核実験禁止条約)がある。英仏の核保有国も批准するが、アメリカは署名したものの未批准で、CTBT自体もまだ未発効の状態である。
だがアメリカはその理念を尊重し、前述のように自主規制を行っている。なおロシアはこれまでCTBTに署名・批准していたが、ウクライナ戦争勃発後、アメリカと対峙するため2023年に批准を撤回している。
アメリカ海軍の「オハイオ」級弾道ミサイル原潜「メイン」。トライデントⅡSLBM(射程1万1000km)を24基搭載(写真:米海軍ウェブサイトより)
ロシアのSS-27ICBM。大型トレーラーに搭載可能で射程は1万1000km(写真:ロシア国防省サイト)
