米露首脳会談後の共同記者発表で、顔を見合わせるロシアのプーチン大統領(左)とトランプ米大統領(2025年8月15日、写真:ロイター=共同通信社)
「盗人に追い銭」の和平合意を進めるトランプ
2025年8月15日、アメリカのアラスカ州で行われた米露首脳会談。主催したアメリカのトランプ大統領は「非常に良い関係を構築できた点で(10点満点中)10点だ」(米FOXニュース)と自画自賛したが、肝心のウクライナ戦争の停戦交渉に関しては腰砕けで、欧米メディアは「茶番」と酷評する。
対するロシアのプーチン大統領は、「ウクライナ領土の割譲」を前提条件に掲げ、一歩も譲らない。ウクライナ戦争をいち早く終わらせ、自分の名声を高め、「ノーベル平和賞」獲得に前のめり状態のトランプ氏は、性懲りもなくまたしてもプーチン氏の口車に乗せられたようである。
早速16日には自身のSNSで、これまでの「即時停戦」を翻し、プーチン氏が唱える「和平合意」を一気に目指す案に方針転換すると発表した。
ウクライナのゼレンスキー大統領に対しても、米露首脳会談以前から、プーチン氏が求める領土割譲では、ある程度の妥協が必要だと繰り返してきた。ゼレンスキー氏は一貫して「わが国の憲法では、領土の割譲・取引を不可能としている」と拒否している。
プーチン氏が掲げる「領土割譲」とは、まずはロシア系住民が多いウクライナ東部のドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)の完全占領を指すらしい。
2022年9月末、プーチン氏はウクライナ本土の4州(ルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン)を一方的に本国に併合すると宣言。ただし現時点でほぼ100%支配しているのはルハンスクだけで、残り3州はいずれも全土の約4分の3を軍事占領したにとどまる。
地図:共同通信社
そこで、「ウクライナ軍が要塞地帯を築き死守するドネツク州北西部をロシアに明け渡せば、和平交渉に応じてもいい」という、マフィア顔負けの無理筋を通そうとしているのである。まさに「盗人に追い銭」そのもので、トランプ氏の圧力に屈してゼレンスキー氏がこれに応じれば、“領土割譲ドミノ”が起きると危惧する向きもある。
果たしてウクライナのゼレンスキー大統領は米露の領土割譲圧力にどこまで抵抗することができるか(写真:Pool/ABACA/共同通信イメージズ)

