
突然SNSに停戦合意を投稿したトランプ氏の「ぬか喜び」
猫の目のように変わる「トランプ劇場」に世界中が振り回されている。
6月23日夕刻(米東部時間)、トランプ米大統領が唐突に、一連のイスラエルとイランの紛争が停戦で合意したと自身のSNSに投稿した。
「おめでとう! イスラエルとイランとの間で、完全かつ全面的な停戦が完全合意された。今から6時間後に、両国が行っている最終任務を完了した後に開始され、停戦は12時間継続し、この時点で終戦と見なされる。正式には、イランが停戦を始めた12時間後にイスラエルが停戦を始め、さらに24時間後に『12日間戦争』が正式に終結する」
と、停戦から終戦までのスケジュールも細かく設定。さらに「この戦争は何年も続いて中東全体を破壊しかねなかったが、そうはならず、今後も絶対にそうなることはない」と永遠の平和が訪れると大見得を切った。まさに「トランプ劇場」の見せ場と言ったところだ。
トランプ氏は半ば自画自賛的に永久平和をアピールするが、果たして本当にうまくいくのだろうか。どうしてもトランプ氏の「勇み足」「ぬか喜び」に思えてならない。
6月13日にイスラエルによる電撃的なイラン奇襲で始まった両国の紛争は、アメリカの軍事介入も誘発し、中東全体を巻き込む大戦争に発展か、と世界が息をのんだ。

宿敵イランの核開発を断固阻止すると叫ぶイスラエルのネタニヤフ首相は、イラン空爆を開始。だが、最重要攻撃目標と見なすイランのウラン濃縮施設は、地下深くに隠され、アメリカの秘密兵器でしか破壊は困難と見られていた。
そこで、ネタニヤフ氏に参戦を懇願されたトランプ氏が6月21日(米東部時間)、イランの核関連施設の空爆に踏み切った。
外国の戦争にかかわらず、予算・資源を国内のために使う「アメリカ・ファースト」がトランプ氏のモットー。ロシア・ウクライナ戦争でのウクライナ支援にも消極的なだけに、「さすがにイランは爆撃しないだろう」との見方が強かったが、世界中が「まさか」と度肝を抜かれた。
アメリカのイラン本土攻撃は歴史上初めてで、イランの首都テヘランの南部100~400kmに連なるフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの核施設3カ所を空襲した。作戦名は「真夜中の鉄槌(てっつい)」。戦闘機、爆撃機、空中給油機など計125機と原子力潜水艦が参加し、かなり大がかりな作戦だった。
最重要目標のフォルドゥの施設は地下80~90mにあると推定、通常の爆弾・ミサイルでは目標に届かず、通常兵器で破壊するには地面にめり込み地下60mで起爆する、米国製の大型地中貫通爆弾(バンカーバスター)GBU-57を使うしかなかった。

バンカーバスターは重量13トン超、全長6m以上もある世界最大級の通常爆弾で、搭載・投下できるのは、アメリカが開発・保有するレーダーに映りにくいB-2ステルス戦略爆撃機だけ。もちろんイスラエルは保有していない。

イスラエルはイランの防空レーダー、対空ミサイル、空軍基地を事前に徹底的に叩き制空権(航空優勢)を確保。露払いも万全で、真夜中の鉄槌作戦は完璧だった。
B-2爆撃機7機はGBU-57バンカーバスター14発を投下、フォルドゥ核施設などの破壊に挑み、アラビア海に展開する原潜もトマホーク巡航ミサイルを発射した模様だ。
