イスラエル自らバンカーバスターを使い核施設を「もぐら叩き」か
とりあえず停戦にこぎつけそうだが、だからと言ってトランプ氏がゴリ押しする無条件降伏の受諾要請に、ハメネイ師がすんなりと応じるとは考えにくい。どこかのタイミングでイスラエル、イラン両国の戦闘が再開する可能性は相当高いと見るべきだろう。
この時、トランプ氏はイスラエルへの加勢のため、さらなる空爆の決断を迫られるが、イラン空爆の常態化は、対イラン戦の主役がイスラエルからアメリカへと交代してしまうことを意味する。これでは「平和第一」「外国の戦争には関わらない」と主張するトランプ氏にとって大きな矛盾で、中間選挙にも悪影響を及ぼしかねない。
それどころか、中東地域に4万名以上駐留する米軍の大半を撤収させ、中国との対峙のために、軍事力の大半をアジア・太平洋にシフトさせる一大戦略もおぼつかなくなる。
最悪の場合は、中東地域に展開する米軍が、イランや親イラン武装勢力の攻撃を受けて死傷者が続出。これに対抗するため、トランプ氏は地上部隊(陸軍や海兵隊)を増援し、戦いは泥沼の長期消耗戦に突入する可能性もある。ベトナム戦争やアフガン紛争、イラク戦争と類似した「いつか来た道」で、最悪のシナリオだ。
このためトランプ氏は、必殺兵器GBU-57による地下施設の完全破壊を実演、今後はイスラエルに爆撃作戦を任せることも検討しているのではなかろうか。
大半のメディアは、「BGU-57を運用できるのはB-2だけ」と口を揃える。だが以前から欧米の一部メディアは、輸送機に同爆弾を載せて投下することは理論上可能で、アメリカは研究を進めているのではないかと報じている。
飛行中に輸送機の後部大型ランプ(扉)を開け、特殊パレットに載せたGBU-57をスライドさせて投下する仕組みだ。使用機体は、イスラエルも約20機有する米製C-130輸送機が考えられる。最大積載量約19トン、貨物室全長12m超で、計算上は1発積載できる。またはアメリカからより大型のC-17輸送機をイスラエルがリースする案も考えられる。

C-17輸送機は最大積載量77.5トン、貨物室全長20mとゆとりがあり、GBU-57を2発積載できる。最大時速は約900km超でB-2と大差なく、また同爆弾は大きな落下エネルギーで地中深く潜り込むため、高高度から投下した方が有利だ。C-17の上昇限度は約1万4000mでC-130よりも1000m以上高く飛べる。
操縦手の確保は課題だろうが、C-17はオーソドックスな輸送機で、C-130や大型旅客機の操縦経験者ならば、操縦習熟に要する時間は、B-2ステルス戦略爆撃機を訓練する場合とは、比較にならないほど短くて済むだろう。
あるいは米空軍のC-17操縦経験者(OBも含む)の中から、イスラエルとの二重国籍を有する者を選び、一時的にイスラエル軍に鞍替えさせる“裏ワザ”もある。あくまでもアメリカがイスラエルに輸送機を貸し、操縦手はイスラエル国籍という体裁のため、「アメリカの参戦」には当たらないと言い訳もできる。

輸送機によるGBU-57投下は、制空権を完全に握り、敵戦闘機や対空ミサイルの脅威がない場合にのみ通用する戦術である。また輸送機投下作戦の実施には、輸送機の改修や、爆弾の誘導装置の改良などカスタマイズも必須だ。
今後、イスラエルがイランの地下核施設や濃縮ウランの地下貯蔵施設を発見したとして、そのたびごとに、米軍のB-2がGBU-57を抱えて出撃するのは国内的にも国際的にも都合が悪い。
イスラエル自身が輸送機によるGBU-57投下を実施し、もぐら叩きのようにイランの地下施設を発見次第、撃破する方が合理的だろう。アメリカも爆弾本体をイスラエルに供与さえすればよく、「なぜ外国の戦争に介入するんだ」というトランプ支持者からの批判も受けずに済む。