イランは空爆を想定し早々にウラン燃料を分散させた可能性も
もうひとつ素朴な疑問が浮かぶ。早くから空爆を想定していたイランは、濃縮ウランを少しずつ別の場所に分散避難させていたのではないかという見立てだ。
2024年4月、イランはイスラエルにミサイル・ドローンで攻撃し、イスラエルもミサイルによる報復攻撃を行った。この時は対空レーダーや空軍基地、ドローン製造施設などターゲットを絞り込み、ナタンズなど核施設はあえて攻撃対象から外したと一部メディアが指摘した。
当時の米バイデン政権は戦争拡大を憂慮し、イランの核施設攻撃は断じてNGだとネタニヤフ氏に厳命したとも言われる。さらにアメリカ、イスラエル、イラン3者の水面下での外交交渉で、アメリカ・イスラエル側が「これ以上攻撃を続けるのなら、核施設への攻撃も辞さない」と圧力をかけた可能性も高い。
こうした事情を考えれば、イランは少なくとも今から1年ほど前に、「近い将来、イスラエルは核施設を攻撃するはずで、いの一番にウラン濃縮施設を狙ってくる」と確信してもおかしくない。そのため、虎の子の濃縮ウランを気付かれないように、広大な国土のあちらこちらに分散させていると考えるのが自然だろう。
一部の欧米メディアからは、フォルドゥが攻撃される数日前の衛星写真に、トラックが十数台も列をなして駐車する姿が写っていることから、「これが濃縮ウランの移送光景ではないか」と勘ぐる報道も出ている。
だが、トランプ氏が爆撃を示唆し始めてから、大慌てで濃縮ウランの“引っ越し”を実行したり、上空で米偵察衛星やイスラエルの偵察ドローンが終始監視する中、白昼堂々、多数のトラックを目立つように施設に横付けしたりするだろうか。
どうやら、これはイスラエルやアメリカを油断させるためのカムフラージュだったのかもしれない。