
米国によるイラン攻撃の可能性が懸念されている。イランの最高指導者ハメネイ師は孤立しているとの報道もあり、政治体制が崩壊すれば同国は内戦状態となり第3次石油危機の引き金となるリスクもある。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=68ドルから76ドルの間で推移している。先週と同様、中東地域の地政学リスクが原油価格を押し上げる展開となっている。
まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
石油輸出国機構(OPEC)は6月16日に発表した月報で「自主減産を実施している8カ国の原油生産量は日量15万4000バレル増にとどまり、予定されていた同41万1000バレル増を大きく下回った」ことを明らかにした。イラクやアラブ首長国連邦(UAE)、ロシアなどが過去の生産超過分を相殺するための減産を行ったが、カザフスタンは依然として割り当て枠を上回る生産を続けている。
月報で現下の中東情勢について言及しなかったが、OPECのガイス事務局長は「今のところイランの原油輸出に影響は出ておらず、OPECが速やかに措置を講じる必要はない」との見解を示した。
イランでは南部沖合の世界最大級のサウスパースガス田の一部が攻撃を受けたが、原油輸出関連施設は打撃を被っていない。
イランはイスラエルの空爆開始以降、原油輸出を加速させている。ブルームバーグは18日「イランの13日以降の原油輸出量(平均)は12日までの過去1年間の平均に比べ44%増加し、日量233万バレルとなっている」と報じた。
だが、ホルムズ海峡は「波高し」のようだ。