世界を驚かせたウクライナのドローンによるロシア軍事基地への大規模攻撃(写真:EPN/ニューズコム/共同通信イメージズ)

ウクライナによるロシアの軍事基地に対するドローン大規模攻撃が世界を驚かせている。そうした中、原油価格はカナダの山火事もあり先週に比べて1バレルあたり2ドルほど上昇して推移しているが、地政学リスクよりも需要低迷への懸念が市場を覆っている。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=62ドルから64ドルの間で推移している。カナダの山火事やロシアとイランの地政学リスクが材料視されて、価格の下限は先週に比べて2ドル上昇している。

 いつものように世界の原油市場を巡る動きを確認しておきたい。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは5月31日、7月も日量41万1000バレルの増産を実施することで合意した。原油価格が弱含みで推移する中、3カ月連続の大幅増産の決定だ。

 だが、市場はこの決定を織り込んでおり、一部で予想されていた規模ではなかったため、原油価格に「買い」が入った。 

 OPECプラスの7月の原油生産量は3月に比べて日量約137万バレルの増加となる計算だが、有志8カ国(サウジアラビア、ロシア、アラブ首長国連邦、イラク、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)の一部が過去の超過生産を帳消しにするための補償措置を講じ始めており、増産幅は110万バレルにとどまるとの指摘がある。

 今回の決定は波乱含みだった。

 ロイターは6月2日「ロシアとアルジェリア、オマーンは『増産分を消費できるほどの需要が強くない』として増産の停止を主張したのに対し、サウジアラビアが増産の加速を主張したため、難航の末に今回の決定となった」と報じた。

 余剰生産能力に余裕があるサウジアラビアと西側諸国の制裁で生産活動が停滞し始めているロシアの立場の違いが鮮明になった形だ。