
今週、原油価格が急落した。トランプ関税に起因する米国・中国の景気悪化とそれに伴う原油需要の減少が懸念されたのが一因だが、それ以上に市場関係者が警戒していることがある。サウジアラビアが原油価格を下支えする努力を放棄する「逆オイルショック」だ。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週、急落した。週始めは1バレル=64ドル近辺だったが、5月1日に56ドル台となり、その後、58ドル台で推移している。米中両国の需要に対する懸念などから市場のセンチメントが急速に悪化している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
4月の原油価格は月間で13ドル下落し、下落幅は新型コロナウイルス変異型の流行が拡大した2021年11月以来の大きさとなった。
足元の動きを見てみると、供給サイドは抑制的になりつつある。
ブルームバーグは5月1日「OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の4月の原油生産量は前月比20万バレル減の日量2724万バレルだった」と報じた。有志8カ国は4月から増産(日量13万8000バレル)を開始したが、ベネズエラが米国の制裁強化のせいで大幅減産になり、OPECプラス全体の生産量は減少した。
米国の原油生産も停滞気味だ。ブルームバーグは5月1日「原油価格が60ドルを下回る状況が続けば、シェールオイルの減産は避けられない」と報じた。
一方、需要サイドでは中国に加え米国の経済状況も材料視されるようになっている。