トランプ大統領の政策によるリセッションがいよいよ現実か(写真:UPI/アフロ)

米国の国内総生産(GDP)が第1四半期に3年ぶりのマイナスとなった。リセッション(景気後退)入りの懸念が広がっていたが、いよいよ現実になったのか。トランプ大統領はバイデン前政権による経済運営の失敗が原因としているが、トランプ関税などの影響が大きいことは明らかだ。景気が悪化すればトランプ大統領は移民対策の強化など「MAGA」支持者にウケのいい政策を強化しかねない。社会の分断が激しさを増し、ナチスの悪夢すら呼び起こされる。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 4月30日に発表された米国の今年第1四半期の国内総生産(GDP、速報値)は前期に比べて0.3%減少した(年率換算)。昨年第4四半期の2.4%増から大幅に落ち込んだ。マイナス成長となったのは3年ぶりのことだ。

 景気の足を引っ張ったのは輸入の増加だ。関税引き上げ前の駆け込み輸入の影響で前四半期に比べて41.3%急増した。国内で生産されていない輸入はGDPから差し引かれる。

 GDPの3分の2を占める消費の伸びが鈍化したことも影響した。前四半期に比べて1.8%増加したが、これは2023年第1四半期(1.0%増)以降で最も低い水準だ。関税引き上げに対する心理的な悪影響が出ている。

 4月以降は関税引き上げの影響で輸入は減少に転じるものの、インフレ率が再び上昇し、個人消費がさらに冷え込む可能性が高いだろう。

 民間調査会社コンファレンス・ボード(CB)が4月29日に発表した4月の消費者信頼感指数は86.0と、前月から7.9ポイント低下して2020年5月以来の低水準となった。所得や労働環境の短期的な見通しを示す期待指数は54.4と、2011年10月以来の水準にまで落ち込んでいる。

 これらの指標は米国経済が既にリセッション(景気後退)入りしていることを示唆している。

 トランプ米大統領は「(GDPがマイナスになったことについて)バイデン前政権の経済運営の失敗の影響だ。第2四半期のGDPもバイデン政権の悪影響が残る」と責任を転嫁しているが、自身の経済運営の結果であることは疑いのない事実だ。

 トランプ氏は就任100日の節目に合わせた演説で「歴代大統領の中で最も素晴らしいスタートを切った」と自画自賛したが、国民の評価はまったく違う。