
OPECプラスが有志8カ国の自主減産分の縮小を決めた。「世界の原油在庫は低水準にある」というのが背景として説明されているが、はたして本当だろうか。決定にはサウジアラビアの意向が強く反映されているとみられるが、この機に米国のシェール産業に打撃を与えたいという思惑があるのではないか。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)はOPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の増産決定を受けて1バレル=55ドル台に下落したが、その後、「米国と各国との貿易摩擦が緩和する」との期待から60ドル台に上昇した。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
OPECプラスは3日、有志8カ国(サウジアラビア、ロシア、アラブ首長国連邦、クウェート、イラク、アルジェリア、カザフスタン、オマーン)の自主減産分(日量220万バレル)を6月に日量41万1000バレル縮小することで合意した。これにより、OPECプラスの第2四半期の増産幅は日量96万バレルとなる(自主減産分の44%)。
これを受けて、5日の原油価格は約4年ぶりの安値となった。
OPECプラスは「世界の原油在庫は低水準にある。健全な市場環境を踏まえた措置だ」と説明しているが、市場では「需給がさらに緩む」との観測が広がった。
OPECプラスの決定の背景には、割当量を遵守しない加盟国(カザフスタンやイラクなど)に対するサウジアラビアの苛立ちがあることは間違いない。
OPECプラスは来年末までに自主減産分を解消することを予定しているが、ロイターは4日「一部の加盟国が生産割当違反を是正しなければ、今年10月末までに自主減産はすべて解除される可能性がある」と報じた。
「ただ乗りを許さない」との姿勢を示すことで、サウジアラビアはOPECプラス内での結束を強化することを狙ったとの見方が一般的だ。
だが、ブルームバーグは8日「カザフスタンは5月に減産する計画はない」と報じた。
カザフスタンの3月の原油生産量は日量217万バレルと割当量を70万バレルも超過している。サウジアラビアの思惑をよそに、「OPECプラス内の足並みの乱れが顕著になるのではないか」との不安が頭をよぎる。
今回の決定はトランプ米大統領のサウジアラビア訪問が関係していたのかもしれない。