トランプ大統領の中東訪問で地政学リスク緩和?

 トランプ氏は再三にわたりOPECプラスに増産を求めていたからだ。

 トランプ氏は5日「原油価格の下落を受けて、ロシアはウクライナとの停戦に意欲的になるだろう」とOPECプラスの決定を歓迎した。

 トランプ氏のサウジアラビア訪問の主な目的は総額1000億ドルを超える米国製兵器のサウジアラビアへの売却に関する合意だ。トランプ氏は「サウジアラビアへの兵器売却は米国の雇用につながる」と評価している。

OPECプラスの決定の狙いは?(写真:AP/アフロ)

 サウジアラビアは鉱物資源分野でも米国と協力する構えだ。サウジアラビアは昨年からレアアースの開発にも力を入れており、米国との関係強化に資すると期待している。

 今回の決定はイランからの原油輸出の減少が考慮された可能性もある。

 トランプ氏は1日、SNSへの投稿で「イランから原油や石油化学製品を購入した国や個人を2次制裁の対象とする」と表明した。2次制裁が発動されれば、大口購入者である中国が購入を回避し、イラン産原油の輸出量が大幅に減少する。
 
 イラン産原油の供給途絶で原油市場に供給不足が生じないよう、サウジアラビアはあらかじめ増産に舵を切ったというわけだ。
 
 米国とイランとの間の4回目の核協議は11日にオマーンの首都マスカットで開催される。予断を許さない状況が続いているが、シティは8日「核協議は最終的に合意に達する可能性が高い」との見方を示した。

 米軍は3月から約2カ月にわたりフーシ派を攻撃してきたが、トランプ氏は6日「フーシ派が紅海での航行を妨害しないことに同意したため、米国はフーシ派に対する攻撃を停止する」と表明した。

 中東地域の地政学リスクは低下しており、原油価格が高騰する懸念は薄らぎつつある。
 
 トランプ氏に配慮したかにみえるサウジアラビアの対応だが、筆者は「真の狙いは別にあるのではないか」と考えている。