フィジカルAIによるロボットの革新がやってくる(筆者がChatGPTで生成)
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
AIが「身体」を手に入れた
2026年に入り、AI業界は熾烈な開発競争の真っ只中にある。OpenAIは昨年末、Googleの追い上げを受けて社内に「コードレッド(緊急事態)」を発令したと報じられ、実際にGoogle Gemini 3への対抗策として急遽GPT-5.2がリリースされた。
次々と新モデルが登場し、ベンチマーク(性能評価指標)の首位が入れ替わるこの状況は、AI技術が成熟期に入りつつあることを示している。
この競争の焦点は今、単なるチャットボットの賢さから新たな領域へと移り始めている。それが「フィジカルAI(Physical AI)」だ。
フィジカルAIとは、簡単に言えば「考えるだけでなく、動けるAI」のことだ。GPTシリーズやGemini のような高度な知能を、ロボットという「身体」と融合させることで、現実世界で自律的に行動できる存在を生み出す技術領域を指す。
従来のチャット用AIが「賢い頭脳」だとすれば、フィジカルAIは「手足を持った頭脳」である。工場で部品を組み立て、倉庫で荷物を運び、家庭で洗濯物をたたむ──。そうした物理的な仕事をAIがこなせるようになる世界が、急速に現実味を帯びてきた。
市場データがその勢いを物語る。調査会社Omdiaによれば、2025年の全世界におけるヒューマノイド(人型)ロボット出荷台数は約1万3000台に達し、前年の5倍以上に急増した。さらに2035年までに、同出荷台数が260万台に達すると予測している。
フィジカルAIを核に汎用ヒューマノイドを開発する米ロボティクス企業Figure AIは、企業価値390億ドル(約6兆円)の評価を受け、BMWの工場で実証運用を開始している。ノルウェーのロボティクス企業である1X Technologiesは家庭用ロボット「NEO」の予約を受け付け、今年から出荷を始める。ゴールドマン・サックスは、この市場が2035年に380億ドル(約6兆円)規模に成長すると予測している。
この地殻変動は、日本に根源的な問いを突きつける。産業用ロボットで世界を席巻し「ロボット大国」と呼ばれてきた日本は、AIが身体を持つこの新時代においても優位性を維持できるのかという問いだ。そこで、日本の強みと課題、そして取るべき戦略について考えてみたい。