AIたちが生成する「脳を腐らせる」動画に注意(筆者がChatGPTで生成)
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(小林 啓倫:経営コンサルタント)

 そろそろ休もうと思ってベッドに入ったが、ふとスマホを開いてYouTubeのショート動画をスワイプし始める。その大半がくだらない内容なのに、気づけば30分、1時間が過ぎている。すぐ寝ようと思っていたのに、なぜこんなに時間を使ってしまったのだろう──。そんな経験に心当たりはないだろうか。

 実はこうした行動は、あなたの意志の弱さではなく、緻密に設計された仕組みと「企業努力」の結果かもしれない。

 動画編集ツールを提供する米Kapwing社が2025年11月に発表したレポートは、私たちが日常的に消費している動画コンテンツの実態を明らかにしている。そこに浮かび上がったのは、低品質なAI生成動画が、ビジネスとしてプラットフォームを席巻している現実だ。

 YouTubeのショート動画コーナーに流れてくる動画は、ランダムに決められているわけではない。公式の解説によれば、視聴者個人の好みと、動画自体のパフォーマンスをAIが分析して選定しているという。

 そこで、Kapwingの調査チームは新規のYouTubeアカウントを作成し、アルゴリズムによる個人化が行われていない「まっさらな状態」で、YouTubeのショート動画に流れてくる最初の500本を分析した。

 その結果は衝撃的だ。500本中165本、実に33%が、このレポートが「ブレインロット(脳腐れ)」と呼ぶ中毒性の高い低品質動画だった。つまり新しくYouTubeを始めたユーザーがショート動画をスクロールしていくと、約3本に1本は視聴者の脳を「腐らせる」ように設計されたコンテンツに出会うことになる。また500本中104本(21%)が、AIによって生成されたコンテンツだった。

 なぜそれほど多くのブレインロット動画、あるいはAI生成動画が氾濫しているのか。その理由のひとつは、それが「ビジネス」として儲かるからである。

 Kapwingの調査によれば、たとえばインドを拠点とするチャンネル「Bandar Apna Dost」は累計20億回以上の再生を記録し、推定の年間収益は約4億2500万円に達するという。制作しているのは、AIで生成されたリアルな猿が人間のように行動するという、同じパターンの動画である(そのような動画が現時点で500本以上公開されている)。従業員もオフィスも必要としない、究極のローコスト・ハイリターンビジネスと言えるだろう。