2026年は「AIで稼ぐ企業」と「AIがコストになる企業」がはっきり分かれる年に?(筆者がChatGPTで生成)
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(小林 啓倫:経営コンサルタント)

 2025年が終わろうとしている。今年もAI界隈ではさまざまな進化と変化が生じ、ついていくのがやっとという方も多いだろう(筆者も例外ではない)。そこで今回は、2025年のAIにおける主要トレンドを振り返った上で、2026年の予測をしてみたい。

 結論から言おう。2026年は「AIで稼ぐ企業」と「AIがコストであり続ける企業」がはっきり分かれる年になる、というのが筆者の予測だ。

 2022年末のChatGPT登場以降、多くの企業が生成AIの導入に取り組んできたが、その大半がPoC(概念実証)にとどまっている。あるいは「とりあえずChatGPTを導入しておく」のような、初歩的な利用しかできていない。そうした「お試し期間」は2025年で終わり、来年は、AIを活用できる企業とできない企業の勝敗が決する年になると考えられる。

 どうしてそう考えられるのか、専門家の分析を引用しながら整理してみたい。

勝ち組と負け組を分けるAIエージェント化への対応能力

【トレンド1】AIは「ツール」から「同僚」へ──適応できるか、それともコスト化するか

 2025年まで、企業内における生成AI活用は、ChatGPTのような「対話型AI」が中心だった。つまり人間がプロンプト(指示)を入力し、AIがテキストや画像を生成して返すというアプリケーションである。

 しかし近年、生成AIの技術をベースとして、自律的に行動することが可能なアプリケーション「AIエージェント」が進化。2025年は「AIエージェントの年」になったと言われるほど、この技術に注目が集まる1年となった。

 コンサルティング会社McKinseyが発表したレポート「The state of AI in 2025」によれば、調査対象となった企業の62%がAIエージェントへの関心を示し、実験を始めているが、実際に全社規模で展開できている企業は23%にとどまった。

 実際、多くの現場では、AIはまだ「メールの下書き」や「議事録の要約」といった、単発タスクを効率化するために使用されている。

 同じくコンサルティング会社Bainが発表したレポート「Technology Report 2025」でも、2025年時点でAIエージェントが創出している価値は、AI全体の価値の17%程度であると分析されている。

 2026年、AIは「ツール」から「同僚」へと進化すると予測されている。Bainは前述のレポートの中で、2028年に向けてAIエージェントが生み出す価値が29%にまで拡大すると予測しており、この動きが2026年に本格化すると考えられる。

 たとえば、従業員が「来週の出張手配をして」と曖昧な目標を与えるだけで、AIが自律的にフライトを検索し、予算と照合し、ホテルを予約し、カレンダーに登録するといった一連のワークフローを完遂するのである。

 コンサルティング会社Deloitteは同社のレポート「Tech Trends 2026」において、この変化を「シリコンベースの労働力(Silicon-based workforce)」の登場と表現している。2026年、企業は人間だけではなく、「デジタル従業員」たるAIエージェントを含めたハイブリッドな労働力を管理する必要に迫られるという。

 一部の業務が人間の手を離れ、AIエージェントによって自律的に回るようになるだろう。それは単なる効率化ではなく、AIが「業務の主体」としてビジネスプロセスの一部を担うようになることを意味し、私たち人間には、AIという部下をマネジメントする新たなスキルセットが求められるようになる。

 このAIエージェント化への対応能力の有無が、2026年のAI価値創造企業・失敗企業を分ける最初の分岐点になる。