2026年に問われるのはAIでどれだけ稼いだか

【トレンド3】拡大する「価値格差」──ROI実現企業と失敗企業の分岐点

 2025年は「AIの民主化」が進んだ年だった。

 スタンフォード大学のAI研究機関Stanford HAI(Human-Centered AI Institute)は、「The 2025 AI Index Report」と題されたレポート(2025年11月更新版)において、調査対象とした企業の78%がAIを使用中と回答しており、生成AIの利用率も前年の33%から71%へと倍増したと報告している。

 もっとも、AIの利用が広がった一方で、その恩恵を実際に受けられているかどうかという点については大きな差が生まれている。

 たとえば前述のBCGレポートは、導入企業の60%は「実質的な価値(収益増など)をほとんど得られていない」と分析している。多くの企業が「とりあえずChatGPTを導入した」「研修を実施した」という活動実績だけで満足し、それが実際の儲け(ROI)につながっているかを厳しく検証していなかった。

 売り上げの増加や企業価値の向上といった価値を実現できている企業は、ごく一部に限られているのである。

 2026年、AI導入競争は「入れたかどうか」ではなく「どれだけ稼いだか」という結果が問われるフェーズに入るというのが、多くの専門家の見解だ。

 BCGは、AI活用に成功している上位5%の「Future-built(未来構築型)」企業が、それ以外の企業に比べて1.7倍の収益成長を実現していると報告している。この上位層はAIで得た利益をさらに次のAI投資に回すことで、他社との差を加速度的に広げているという。

 この「AIが生み出す価値の格差(Value Gap)」は2026年に決定的なものになるだろう。成功企業は、単なる業務効率化(コスト削減)だけでなく、AIを使った新商品開発や新しいビジネスモデルの構築といった価値の創出に軸足を移す。一方で成果を出せない企業は、投資コストの回収もままならず、競争力を失うことになるかもしれない。