【生成AI事件簿】AI経由でニュースを消費する時代に求められるジャーナリストの能力と読み手に求められるリテラシー
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(小林 啓倫:経営コンサルタント)

ニュースをAI経由で消費する時代

「2025年12月11日に報じられたテクノロジー系のニュースの中で、最も重要なもの3つを、それぞれ100字前後に要約して教えて」。こんなプロンプトをChatGPT(GPT-5.2)に入力してみたところ、出力されたのが以下の結果である。

1)中国政府が半導体企業の対立調整に乗り出す
中国商務省は、聞泰科技(ウィングテック)とオランダ子会社ネクスペリア間の経営対立について、政府が協議支援を強化すると表明。世界的な半導体供給網への影響や中国企業の国際的プレゼンスが焦点となる動き。

2)TIME誌が「AI設計者」を2025年の人物に選出
TIME誌は2025年の「Person of the Year」にAI技術の主要開発者・推進者らを選出。Nvidiaや主要AI企業の経営者が取り上げられ、AIの技術的・社会的影響の大きさが象徴された。

3)米株式市場でAI株の不安と記録的指数形成
S&P500・ダウ平均は史上最高値で取引を終える一方、Oracleの弱い業績やAI関連株への警戒からナスダックが下落。テック株への見方が転換しつつある動向が示唆された。

 3番目のニュースにある「AI関連株への警戒」はどういうことだろうか。相変わらずAI分野では新しいモデルやサービスの発表が相次いでいるし、トランプ大統領もAI推進の姿勢を崩していない。みな強気ではないのか、との疑問も浮かぶ。

 そこで、「なぜAI関連株への警戒が生まれているのかを中心に、3番目のニュースの背景を200字前後で要約して」とさらに指示したところ、次のような回答が表示された。

 米IT大手オラクルが発表した第3四半期決算で売上高・利益が市場予想を下回り、AIインフラ投資の大幅増額も示されたため、投資家のセンチメントが悪化しました。特にAI関連支出の採算性や負債依存への懸念が高まり、過大評価されたAI株に対する「バブル懸念」が再燃。これがナスダック中心のテック株売りを誘い、AI関連株の調整圧力となっています。オラクル株急落は、AI期待の行き過ぎを象徴するシグナルとして受け止められました。

 なるほど。強気すぎる姿勢が、逆に「バブルではないのか?」という懸念につながっているということだろうか。通常なら、このくらいで深掘りはやめてしまうのだが、せっかくなのでこの「独り言」をChatGPTに向かってつぶやいてみたところ、次のような返事が返ってきた。

 はい、その理解でおおむね正しいです。整理すると、次のような構図です。

 AI関連企業が示す極めて強気な成長見通しや巨額投資計画は、本来は将来性の裏付けですが、一方で「その投資は本当に回収できるのか」「需要は想定通り持続するのか」という疑念を同時に生みます。

 特に今回のように、業績が市場予想に届かない一方でAI投資だけが急拡大すると、「期待先行で株価が押し上げられすぎているのではないか」というバブル警戒が強まります。

 つまり、強気な姿勢そのものが否定されているのではなく、強気が“数字として裏付けられていないこと”が、警戒感の正体です。

 物知りで最新情報に精通しており、しかも説明が上手な友人と会話しながらニュースを聞いている感覚だ。もちろん上記の回答には、ChatGPTが参照した情報源へのリンクも貼られているのだが、そちらに画面を遷移する必要性は感じなかった。むしろ元記事を参照しても、ここまで効率的に情報を入手・消化できなかったかもしれない。