ニュースをAI経由で消費する時代のジャーナリズムとは?

 こんな風にAIを使っているのは著者だけなどと言うつもりは微塵もない。「私も同じような使い方をしている」と感じた方は多いだろうし、実際の調査でもそうした傾向が現れるようになっている。

 たとえば、Pew Research Centerが2025年10月に発表したレポートによれば、米国の成人の10人に1人程度(約9%)が、AIチャットボット経由でニュースを得ているという結果が出ている。まだまだ少数派だが、この割合は確実に増えていくだろう。

 では人々がAI経由でニュースを収集し、消費するようになったとき、ジャーナリストに求められる役割はどう変わるのだろうか。この点について、デジタル・ジャーナリズムとAIの関係を専門に研究・発信している編集者のダニエル・トリエリ(Daniel Trielli)が、ジャーナリズム研究機関Nieman Labのサイトで刺激的な主張を展開している。

 その記事「エージェンティック・ジャーナリズムの時代」によれば、人間のジャーナリストが、AIのために記事を書く時代が来るという。

 彼の主張はこうだ。

 いまウェブの世界は、従来のように人間が閲覧するのではなく、エージェンティックAI(エージェント型AI、AIエージェント)が人間に代わって情報の取得や共有などを行う場所になろうとしている。

 そして前述のように、人々は情報を得るためにAIベースの製品を利用するようになっており、さらに一部の人々は、AIツールを既存のニュースよりも「親しみやすく、偏見が少なく、自分の好みに合っている」と捉えるようになっている。

 そのような世界では、報道機関は自分たちのコンテンツを収益化するために、AIが理解しやすいように工夫された形で記事をパッケージ化することが求められるようになる──。つまり「AIに向けて記事を書く」というわけだ。