SNSでの誹謗中傷や誤情報発信を防止するための条例を制定する動きが広がっている(写真:yoshi0511/Shutterstock.com)
SNSを中心としたネット上での差別的な投稿や誹謗中傷が止みません。こうした人権侵害を抑制するため、発信者の氏名公表や5万円以下の過料を科す条例が、鳥取県で施行されました。ネット上での中傷・差別発言に罰則を持って臨む条例は、全国で初めてです。同様の条例制定を目指す動きは他の地域でも始まっています。こうした投稿は最近、特に選挙時に目立つようになりましたが、抑止効果はあるのでしょうか。「SNS規制条例」をやさしく解説します。
鳥取で全国初の罰則付き「SNS規制条例」
鳥取県で制定されたのは「改正・鳥取県人権尊重の社会づくり条例」です。2025年12月下旬の鳥取県議会で可決・成立し、この1月25日から施行されました。改正条例の規定によると、SNSなどのインターネット空間で行われた誹謗中傷・差別的発言などについて県民からの申し出があった場合、以下の①〜④の順で対策が講じられます。
① 知事は「有識者協議会」に意見を聴いて中傷・差別投稿に該当するかどうかを判断
② 該当すると判断した場合は、その情報の発信者に削除を要請
③ 発信者が削除に応じない場合は有識者協議会の審議を経て削除を命令
④ それでも発信者が削除しない場合、鳥取県はアカウント名や氏名を公表し、5万円以下の過料を科すことができる
SNS上では、根拠のない誤情報・偽情報が飛び交い、特定の個人を標的とする誹謗中傷や差別も絶えません。この鳥取県条例はそうした被害に遭った個人を救済することを目的としています。鳥取県の動きを報じるニュースはこの条例を「SNS中傷対策条例」などと表現していましたが、趣旨はあくまで人権の擁護。条例の全文にもこう記されています。
〈すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であり、人間として尊重され、基本的人権の享有が保障されなければならない。これは、人類普遍の原理であり、自由と正義と平和の基礎であり、かつ、法の下の平等及び基本的人権の保障を定めた日本国憲法の精神にかなうものである。〉
条例の改正に向けた準備が進んでいた2025年11月、鳥取県の平井伸治知事は記者会見で、罰則付きでSNS発信を規制する背景には「(誹謗中傷などによって)最近は命を絶つことも珍しくなくなってきている」という現実があると強調。そのうえで、次のように述べました。
「命令に従わないときに氏名の公表、あるいは行政罰としての過料、こういうものも実効性担保の措置として考えようというものだ。(被害者の)速やかな権利回復、あるいはデマや侵害行為が拡散しないように早めに手を打てるように、ということだ」