選挙で誤情報・誹謗中傷の拡散が大問題に

 SNS上での差別投稿や誹謗中傷を何とか減らしたい――。そういう目的から条例を制定する地方公共団体は、鳥取県だけではありません。

 一般財団法人・地方自治研究機構の調査によると、インターネット上での誹謗中傷から被害者を守ろうという条例は、群馬県でいち早く制定されました。2020年12月施行の「群馬県インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例」です。誹謗中傷を行った発信者に対する罰則こそありませんが、群馬県条例は専門の被害相談窓口を設置。2024年3月までの約3年3カ月で1000件近い相談が寄せられました。

図:フロントラインプレス作成

 同様の条例はその後、都道府県レベルでは、愛知県、三重県、大阪府など直近の鳥取県を含め8府県に拡大。市区町レベルでも、さいたま市や東京都江戸川区、長野市、大阪府和泉市など15自治体に広がりました。多くの条例は被害防止に向けた教育・啓発の充実などを掲げています。一方、鳥取県のような罰則規定こそないものの、大阪府や佐賀県などは誹謗中傷を行った発信者に対し、投稿の削除を要請できると条例で定めています。

 こうしたなか、注目されるのは、兵庫県と宮城県の動向です。

 兵庫県では2025年12月、「インターネット上の誹謗中傷、差別等による人権侵害の防止に関する条例」が成立し、ことし1月1日から施行されました。特徴は、被害者からの申し出の有無にかかわらず、県が独自にネット空間をモニタリングし、県内の個人や集団に対する人権侵害情報がないかどうかをチェックできると定めたことです。

 該当する情報が見つかれば、県はSNSなどの事業者に削除を要請できる一方、それでも削除されない場合は、人権侵害情報の発信者に対する「指導、助言」ができると明記しました。

 広く知られているように、兵庫県では2024年の知事選の前後、特定の個人や候補者に対する誹謗中傷がSNS空間に溢れ、大問題となりました。知事に対する内部告発文書問題に関しては、県議会百条委員会の委員だった竹内英明元県議に対し、「知事を貶(おとし)めた主犯格」「黒幕」などとする投稿が相次ぎ、竹内氏は自死するに至りました。

 新たな兵庫県条例には罰則規定がなく、人権侵害情報の定義も明確とは言い切れませんが、SNS情報による大混乱を教訓にして一歩を踏み出したとは言えるでしょう。

 宮城県でも知事選を教訓にした動きが出ています。2025年10月の同知事選でも、候補者に関する誹謗中傷や虚偽情報が溢れ、「SNSでの戦い」は熾烈を極めました。それを踏まえ、宮城県議会は選挙後、誹謗中傷対策に向けた条例の制定を目指す検討会を発足させています。会合では「罰則規定も検討せよ」との意見も出ており、2026年中の条例制定を目指しています。