出所:共同通信イメージズ
正社員の人手不足を感じる企業は51.6%となり、4年連続で半数超を記録した――帝国データバンクが2025年10月に行った調査では、日本企業が抱える「人が集まらない」という慢性的な課題が浮き彫りになっている。自社を「人が集まる企業」にするためには、どのような取り組みが必要なのか――。そのための打ち手について、日本企業が当たり前のように行使してきた「ある権利」を手放すことが必要だと語るのは、2025年9月に著書『人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」』(光文社)を出版した法政大学教授の石山恒貴氏だ。日本企業が取り組む人事施策にみられる課題、見直すべき人事制度の原則論について同氏に聞いた。
「ジョブ型雇用」を人事施策と混同してはいけない
──著書『人が集まる企業は何が違うのか』では、「①無限定総合職(無限定性)」「②標準労働者」「③マッチョイズム」から成る日本企業の仕組みを「三位一体の地位規範信仰」と表現し、その課題と解決の方向性を示しています。近年、各社が取り組む「ジョブ型雇用」や「人的資本経営」についても触れていますが、どのような問題点があるのでしょうか。
石山恒貴氏(以下敬称略) そもそもメディアや一部の人事コンサルタントが用いている意味合いの「ジョブ型雇用」は、現実的に実践することに適したモデルではありません。
ジョブ型雇用という考え方を紹介した労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長の濱口桂一郎氏は、当たり前の雇用契約の形態のことをジョブ型雇用と呼んでいます。これは、「いつ・どこで・何の仕事をするのか」が明確に規定された契約形態のことあり、そもそもそれを規定しないのに雇用契約というのも奇妙な話です。
しかし日本企業の実態の多く、入社時に「いつ・どこで・何の仕事をするか」を会社が命じることできる内容の契約を結びます。このような契約は、入社した企業のメンバーになったという契約の側面が強いため、「メンバーシップ契約」と呼ばれたわけです。
そのような理念型の雇用の議論であったにもかかわらず、「ジョブ型にすれば成果主義になる」「解雇が容易になる」といった説明にすり替えられて、そうした言説に踊らされた企業に横並びの人事制度が導入されるという事態が生じてしまった場合もあるのではないでしょうか。
企業の人事のあり方を考えるときに、国全体で同様の制度設計をしようというマクロの視点の議論になることが、そもそもおかしいでしょう。
企業が競争力を高めたいのであれば、そうしたマクロな視点ではなく、自社の実情に即したミクロな施策を考えることが重要です。企業の競争力とは、ビジネスモデルや企業文化といった独自の強みによって生まれるものだからです。
抽象的で包括的なマクロ施策を他社と横並びで導入しても、競争力が高まることはありません。ジョブ型、人的資本経営といったはやりの言葉に飛びついても、独自性を伴わなければ競争力を高めることはできないのです。







