各種総菜が並ぶ「トライアルGO」の売り場写真提供:共同通信社
円安による物価高と所得の伸び悩みが続く中、日本では「格差」以上に「実感としての貧困」が拡大している。その変化は、プライベートブランド(PB)や総菜、冷凍食品、小容量商品、さらには買い物の場の選び方にまで明確に表れている。この構造変化は、売り場と流通戦略に何を突きつけているのか。流通科学大学商学部教授の白鳥和生氏が読み解く。
生活実感としての「貧しさ」が広がる日本
株価は上がっているのに、生活は楽にならない。高齢化と雇用の不安定化が進む中、円安による物価高は家計を確実に圧迫する。日本は一様に貧しくなったのではないが、「実感としての貧困」は広がっている。その変化は、プライベートブランド(PB)や総菜、冷凍食品、そして買い物の場の選び方に、はっきりと刻み込まれている。
日経平均株価は上昇しているが、その恩恵を受けるのは金融資産を十分に保有する一部に限られる。年金生活者や非正規雇用者、若年層の多くにとって、株高は「ニュースの中の出来事」に過ぎない。
一方で円安は、輸入物価を通じて食料品や日用品の価格を押し上げ、家計に直接効いてくる。資産効果は一部の層に偏在する一方で、物価高は所得階層を問わず広く薄く、しかし確実に効く。この非対称性こそが、生活実感としての「貧しさ」を強めている。
こうした実感は、感覚論ではない。厚生労働省の「所得再分配調査」を見ると、税や社会保障による再分配を行う前の「当初所得」のジニ係数は、2023年に0.5855と過去最大に達した。
ジニ係数とは、所得分配の不平等度を示す代表的な指標で、0に近いほど格差が小さく、1に近づくほど格差が大きいことを意味する。各国比較や時系列分析に広く使われ、所得格差の動きを把握するための基本的な物差しとされている。当初所得のジニ係数が過去最大に達したものの、再分配後のジニ係数は0.38台に抑えられており、統計上は再分配によって格差が緩和されているようにみえる。






