国レベルでも対策、表現の自由とのバランスに課題も

 地方レベルではなく、国レベルの対策はどうなっているのでしょうか。

 総務省の「違法・有害情報相談センター」によると、誹謗中傷などに関する2024年度の相談件数は6403件に上りました。年によって上下はあるものの、2015年度にそれまでの3000件台が一気に5200件に達して以降は、6000件前後で高止まりしています。

 こうした事態に向き合うための法整備は徐々に進んできました。2022年施行の改正刑法では、侮辱罪の法定刑がそれまでの「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」から「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」に引き上げられました。ネット空間での誹謗中傷を想定しての法改正です。

 これとは別に、同じ2025年には「プロバイダー責任制限法」が改正され、名称も「情報流通プラットフォーム対処法」に変えて再出発しました。この法律では、SNSを運営する企業に対し、①削除申請があった場合、迅速に対応すること、②削除申請を受け付ける窓口を設置すること、③投稿を削除する際の基準を策定し公表すること――などが義務付けられました。

 前身のプロバイダー責任制限法は、匿名掲示板「2ちゃんねる」「5ちゃんねる」が盛んに使われていた2002年に施行されたもので、悪質な投稿で被害を被った人がネット事業者に匿名投稿者の情報を開示するよう請求できる権利を認めていました。改正後の情報流通プラットフォーム対処法はこれをさらに進め、事業者の責任で悪質な情報を削除するよう定めたものです。

 ただし、今のところは顕著な成果があったとの報告はなされていません。

 誹謗中傷や差別的な投稿とは、いったい何か。だれがどんな基準でそれを認定するのか。SNS規制は一歩間違うと、表現の自由を侵害する重大問題に発展しかねません。しかし、投稿された内容を苦にして自死する人も出るなど、被害の深刻化に歯止めがかかる気配がないのも事実です。

 鳥取県のような罰則付きの条例を各地に広げたり、国の制度を強化したりすることで効果が生まれるのか。それとも技術の発展や拡散の速度に規制は追いつかないのか。そんな大問題がスマホの小さな画面に横たわっているのです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。高田氏の近著に『調査報道の戦後史 1945-2025』(旬報社)がある。