ゴミ動画の生成で数百万ドル規模の収益
話をビジネスの側面に戻そう。こうしたゴミ動画を作成するというのは、それに晒される視聴者にとっては迷惑な話だが、極めて効率的なビジネスモデルとなっている。
それにはいくつかの理由がある。まず、制作コストがほぼゼロに近い。かつて動画制作には撮影機材、編集ソフト、そして何より「人間が集中して費やす時間」が必要だった。しかしAI生成ツールを使えば、プロンプトを入力するだけで動画が完成する。1本あたりの制作時間は数分、コストは電気代とサブスクリプション料金程度だ。
次に、量産が可能という点である。人間のクリエイターが1日に作れる動画には限界があるが、AIには休憩も睡眠も必要ない。同じフォーマットで設定を少し変えるだけで、無限にバリエーションを生み出せる。猿を擬人化するというコンセプトで500本以上を制作した前述の「Bandar Apna Dost」チャンネルは、その典型だ。
そしてYouTubeのアルゴリズムとの相性の良さも無視できない。
このプラットフォームのアルゴリズムは「視聴時間」と「エンゲージメント」を重視する。ブレインロット動画は、質は低くても「つい見続けてしまう」設計になっているため、アルゴリズムに高く評価されやすい。結果として、おすすめ欄に表示される頻度が上がり、さらに再生回数が伸びる──という好循環(あるいは悪循環)が生まれる。
Kapwingはレポートの中で、各種SNSに関する統計データを収集・分析するウェブサービスであるSocialBladeの推計を用い、人気のAIスロップチャンネルが数百万ドル規模の収益を得ている可能性に触れている。視聴者が「くだらない」と感じても、再生され、広告が付けば収益は発生するのである。
YouTube自身は、この問題に対して複雑な立場にある。
同レポートは、YouTubeのCEO、ニール・モハンの言葉を紹介している。それによれば、彼は生成AIを「シンセサイザーが音楽にもたらした革命と同じくらいのゲームチェンジャー」と評価している。「AIがどのくらい使われてるかじゃなくて、結局、人間が作ったかどうかが重要だ。AIで生成される動画が75%だろうが、5%だろうが、その点は変わらない」というのが彼の見解だ。
しかし現実には、YouTube(そしてその親会社Google)は、プラットフォーム上の視聴時間が増えるほど広告収入が増える構造になっている。ブレインロット動画が視聴者の感覚を麻痺させ、彼らに延々とスクロールさせ続けることはビジネスモデルとしては都合が良い。
英ガーディアン紙の分析によれば、2025年7月時点で、世界で最も急成長しているYouTubeチャンネルの約10分の1が「AI生成コンテンツのみ」を投稿しているという。YouTubeがこの流れを本気で止めようとしているのか、それとも黙認しているのか。答えはまだ明らかになっていない。