「ハードウェア思考」からの脱却が難しい日本企業
第2に、「ハードウェア思考」からの脱却が難しい。
日本の製造業はハードウェアで強みを築いてきたが、フィジカルAI時代の主役はソフトウェアだ。多くの日本企業では、依然としてハードウェア設計が組織の中心にあり、ソフトウェアは「補助的な役割」と見なされがちだ。ロボティクスの分野に限った話ではないが、成功体験に基づいて確立された企業文化ほど、転換が難しいものはない。
第3に、エコシステムの閉鎖性がある。
フィジカルAIの開発には、膨大な実世界データと、それを処理するクラウド基盤、シミュレーション環境が必要だ。米中の主要企業は、異業種のパートナーと連携してオープンなエコシステムを構築している。しかし日本企業の多くは「自前主義」に固執し、社内でデータを抱え込む傾向がある。これでは、AIの学習に必要な多様で大規模なデータを集めることが難しい。
第4に、日本企業はえてして商業化のスピードが遅い。
日本にも世界水準のロボット研究者はいるが、彼らの研究成果が製品に反映されるまでには長い時間がかかる。米国ではFigure AIが創業3年で390億ドル企業に成長し、米国の著名ロボティクス企業であるBoston Dynamicsの出身者が次々とスタートアップを立ち上げている。対する日本のユニコーン企業数は世界全体の0.5%に過ぎない。
最後に、リスクを取る文化の欠如も指摘しなければならない。
OpenAIは1兆ドル規模のインフラ投資をコミットし、Metaはロボットスタートアップに20億ドルを投じた。こうした大胆な意思決定のスピードは、日本企業のそれとは次元が異なる。失敗を恐れ、完璧を求めすぎる傾向は、変化の激しいAI領域では致命的な足かせになり得る。
課題を直視した上で、日本が取るべき戦略を考えたい。悲観に終始するのではなく、現実的な活路を見出すことが重要だ。